柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

絶叫

あっという間に8月。今年は帰省もしないのだけど、家の外もとても暑くてなかなか外に出る気にもなかなかならない。クーラーの効いた部屋で読書。

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

 

 

葉真中顕「絶叫」を読んだ。昔はてなダイヤリー罪山罰太郎名義で書かれていたブログは読んでいたのだけど、小説家デビューされたことは知りつつこれまで手にする機会がなかった。

朝、娘の付き添いで病院に行った待ち時間に読み始め、その面白さに午後も家で夢中で読んで夕方には一気に読了。

Amazonの紹介曰く、

平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。
猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか?
社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!

時系列にズレがある異なる三者の視点で語られる話が紡がれて、しだいしだいに輪郭が見えてくる。その中で語られる主人公鈴木陽子の人生。母親から愛されず、父親は失踪し、本人は平凡。平凡にもかかわらず人生を平凡に恙無く過ごすことは叶わず、どんどんと物事が悪い方へと向かっていく。その中で実は。。最後の大どんでん返しは暗澹たる気持ちになる一方で、ある意味痛快でさえある。

いまこうして日々をクーラーの効いた快適な部屋で過ごしているのはたくさんの偶然と少しばかりの幸運のおかげなのだろう。でもそれはいつまでも続く保証があるようなものではない。自分たちに、子供たちに、そして周りの人たちにも幸多からんことを。

県境をまたいでの移動の自粛解禁である。自粛解禁というのはいかにも日本的な表現だ。自粛というからには自分の判断でリスクをとって行動することになんの問題もないはずだし、『解禁』の対象になるようなものではないと思うけど。解禁だろうがなんだろうが、気を緩めるのではなく適切な行動を取り続けないといけない。

転職して日本に戻ってきて一番驚いたのはこの回りくどい言い方だった。『〜することを検討してください』というメール。これを読んだ上で検討し、自分の判断でやらないことにしたのだ。その結果、困ったことになった。そんな曖昧な表現をせず、『〜してください』『〜するように』でいいのに。なにかとSpecificityにかける表現が多いのだよ。自主性に任せているのか、単に責任の曖昧化なのかどちらだろう?

 

愚痴っぽくなってしまった。この2ヶ月半、自分の判断でほとんど家から出なかった。スーパーに行ったり、家の周りを散歩したりはしたけれど、そのぐらい。子供達も家にいる時間が長く、オンライン授業は続いていたけれどやはりほとんど家にいた。ぼくも1日3時間の通勤時間がゼロになって、家族がとても近く、仲良くなった。禍福は糾える縄の如し。

娘はそのおかげか本好きになったみたい。いまは銭天堂シリーズを夢中になって読んでいる。こないだまでは『おしりたんてい』だったのにね。今日それで銭天堂の続巻を買いに行った紀伊国屋書店で手に取ったのが『の』。とても綺麗な挿絵。『わたしの お気に入りのコートの ポケットの中のお城の いちばん上のながめのよい部屋の 王さまのキングサイズのベッドの……』とどんどん続いていく。一つのページの要素をズームアップして、どんどんミクロの世界に入っていく。『の』でつながって、その先、その先に続く素敵な世界。そして最後は。。最高の絵本。

『の』に触発されて、今から四半世紀前高校生の時に田舎の本屋で注文購入し、それからずっと大事にしている『パワーズオブテン』を久しぶりに本棚から引っ張り出してきた。『の』の世界と同じように、でもこちらはサイエンティフィックに10の25乗の宇宙から10の-16乗の素粒子の世界までの旅。久しぶりに読んだけれど、やはりわくわく。

日本の都会で暮らしていて何より嬉しいのは本屋に行ってたくさんの本に出会えること。最近はずっとAmazonで買い物するばかりだったけど、実物の世界にしかないものもある。感染対策に気をつけながら、実物の世界に再び少しずつ出ていきたい。

 

の (福音館の単行本)

の (福音館の単行本)

  • 作者:junaida
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 単行本
 

 



 

 

 

 

 

平民金子『ごろごろ神戸』

平民金子さんのエッセイ、ごろごろ神戸を読んだ。何気ない神戸での生活をつづったエッセイ。

ぼくは2003年の夏に神戸に引っ越した。2005年に当時のはてなダイアリーで日記をつけはじめ、結婚し、そのあと2008年の夏に神戸を去ってマニラに移った。

神戸で暮らしていた時のぼくの行動範囲は三宮から東側がほとんどだったからわからないことも多い。その代わり記憶の中に眠っていた保久良神社あたりの様子や渦森台、芦屋川沿いや、夙川の景色、なんども通った焼肉たじまや、六甲山から見下ろした街の景色や、六甲アイランドの様子が浮かんでくる。

あのころはまた神戸に戻ってくると思っていたけど、そのあと9年海外を転々としてそのあとは横浜にやってきた。横浜も神戸もなんとなく似ている。山手公園山下公園の辺りを歩くのはとても楽しい。六甲山みたいな手頃な山が身近にないのだけが残念だけれど。

日本に帰ってきていろいろ忙しく、気楽なTwitterを眺めているだけで自分からこうやって日記を書くこともあまりなくなった。でも自分が10年前に書いていた記事を読むと、あの頃の気持ちが少しだけ蘇ってくる。

一期一会。コロナウイルスが落ち着いたら、子供達を連れて神戸に行ってみたいな。

 

ごろごろ、神戸。

ごろごろ、神戸。

  • 作者:平民金子
  • 発売日: 2019/12/10
  • メディア: 単行本
 

 

 

ミニチュア菜園

新型コロナウイルスの外出制限などでガーデニング人気が高まっているなんてニュースをみた。マンション暮らしのぼくたちには庭があるわけでもなく、プランターや土もなく。ただ世の中いろいろなやり方があるらしい。水に浸したキッチンペーパーの上に人参と胡瓜、それからアルストロメディアの花とった種を並べてみた。一晩たって、にんじんのヘタから緑の茎と葉が伸びてきた。ミニチュア菜園。どこまで大きくなるのかな?

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子供の日

火曜日。今日は子供の日。子供たちとこいのぼりを色紙で作ったり、本をいっしょに読んだり、クッキーを焼いたり。一日中子供達といっしょに遊んで体はくたくた。でも、気持ちは充実。4月から在宅勤務をはじめてそのままゴールデンウィークに入って1ヶ月と少し。そのあいだ一度コストコに買い出しに行ったのを除くと、ずっと家から1km圏内で暮らすというレアな経験。娘や息子との距離がぐっと近くなった気がする。

 

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宝島

金曜日。通勤のクルマの中でこの1ヶ月弱たのしんで聴いた宝島もついに大団円を迎えた。戦後、米軍統治下の沖縄で、米軍基地から物資を強奪してそれをコザの人たちに分け与える英雄だった戦果アギヤーの若者たちの物語。米軍、米民政府、琉球警察、ヤクザ、教師、戦争孤児、娼婦たちとさまざまな人たちが登場する。冒険譚であり、サスペンスであり、成長譚であり、喪失の物語。

通勤中にもかかわらず涙が抑えられない場面もある。沖縄が置かれてきた苦しみ。それでも沖縄の場所の持つ力とそこで暮らす人々の力を感じる物語。沖縄の基地を巡る問題を扱いながら、極上のエンターテインメントでもある。

オーディブルで朗読をしている松本健太さんという方は沖縄出身らしく、登場人物たちの話す沖縄の言葉も魅力的だった。

【第160回 直木賞受賞作】宝島

【第160回 直木賞受賞作】宝島

  • 作者:真藤 順丈
  • 発売日: 2018/06/21
  • メディア: 単行本
 

 

 

キングダム

Netflixで話題の韓国発時代劇ゾンビドラマ『キングダム』が面白い。韓国の時代劇と、ゾンビものがミックスという新しい作り。韓国で3年間暮らし、ゾンビ映画好きの僕はどハマり。

亡くなったはずの王を存命させるために生死草なる草を使い王を蘇らせることから始まるゾンビの蔓延。このゾンビは夜にのみ行動し、太陽が昇るとくらいものかげに隠れていく。迫りくるゾンビ。宮廷内の権謀術数と陰謀。裏切り。

ゾンビものと韓国時代劇のいいところどりですごく面白く、ハイクオリティ。シーズン1とシーズン2でまずは一区切りである。シーズン3が待ちきれない。

 

Kingdom | Netflix Official Site