会社帰りに彼女と二人で今上映中の墨攻を見た。結果は実に満足。
中学生時代に読んだのでちょっと記憶があやふやだけど、原作小説の方では主人公は規律重視・理詰めで時に非情なところもある戦略家という側面がとても強かった。ものすごく優秀で集団を厳しい規律で結んでなんとか大国相手に善戦して行くものの、人の心を奥底のところではつかめずにそれによって裏切りを生んで破滅を招く姿が淡々と描かれてた*1。他方高校時代に連載されてた漫画の方は一大スペクタクル。なんじゃこりゃー、という奇想天外な戦術にはじまり、はては始皇帝やら墨家内での政治闘争やらとふくらんでいって大河ドラマって感じだったな。
それに対して映画の方は、基本はスペクタクル、さらに小説より主人公革離と周りの人々の人間性に焦点をより当てた感じか。革離自身、小説に比べてとても人間臭い。自分のやっていることに悩んだり、自分に思いを寄せる女性に次第に心を開いて行ったり*2。梁の王子が次第に革離に傾倒していくところや、敵方総大将の誇り、弓隊隊長の忠誠心と絶望なんかもうまく描かれてたと思う。最初は救世主として八面六臂の大活躍だったのにいつの間にかその活躍の為に依頼主である王とその取り巻きの嫉妬と疑心暗鬼を生んで行き破滅へという流れは悲しいけれど*3。
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それにしても、10万人の敵兵、4000人の味方ともにバタバタと死んで行く。阿呆な王によって有為の人間を無意味に処罰する刑も次々執行されて行く。人間の命って軽かったんだな、と改めて感じる。近代以前の庶民って生きる事・食べる事が最優先で、理念だとか目標だとか『いかに生きるか』なんてことは一部の知識層/支配階層だけのものだったんだろうな。戦争が無いからこそ、僕たち一般庶民でさえ自己実現とか生き甲斐とかいろんな事を考えて、自分次第で日々有意義に過ごすことも可能。なんて幸せな時代だ。