柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

伊勢熊野旅行2日目

さわやかな目覚め。朝から昨日の鯛とヒラメのあら煮を美味しくいただき、9時に民宿を後にした。パールロードを再び通り、リアス式海岸の美しい海を眺めながらひた走る。前にある自転車雑誌でパールロード自転車ツーリングの記事があったけどそれも気持ちいいだろうなあ。かなりのアップダウンがあるからけっこう大変そうだけど。
志摩半島の先に行ってみたい気持ちもあるけれど、先を急いでパールロードを外れ、穏やかな伊雑ノ浦をながめながら西へ西へと。気の早い蝉の声を聞きながらしばらく田畑や山の中を走っていたら、再び海沿いの道になる。これを何度も繰り返す。夏休みにいった田舎の祖父母の家を思い出させる道のり。記憶というのは面白いもので、もう5年も前になるツーリングの時に見た光景が記憶の片隅にあるのか初めて走る道にはない懐かしさがある。
2時間以上走ってようやく紀伊長島の道の駅で休憩。青い空の下で食べるソフトクリームが美味しい。紀伊半島では一年中とれるという柑橘類も甘酸っぱさがたまらない。名物マンボウは今回は遠慮して先へと進んだ。
高い山を越え、一気に海沿いへと下る道のりをこえ、尾鷲を抜ける。尾鷲に入ったところにあるビジネスホテルに泊まったのも懐かしい。さらに熊野街道を走り、鬼ケ城トンネルを抜けた先の海岸でクルマを止めてお昼にした。この海岸は砂ではなくって玉砂利が敷き詰められている、広い広い海岸。太平洋からの強い風に乗ってトビが何羽も優雅に飛び、その風の中でたくさんの鯉のぼりがはためいていた。

この後熊野速玉大社に立ち寄った。予想してた混雑は全くない。門をくぐると中から篠笛と鼓の音が聞こえてきた。こんな素敵な場面に出くわせるなんて、なんかついてる。ところが残念ながらちょっとタイミングが遅く、少しだけ聴いたところで終わってしまった。どんな人たちが演奏してたんだろうと近寄ってみて、鼓を持っている人たちの装束にびっくり。みんな革ジャンを着込み、背中には八咫烏の刺繍。目の錯覚か?バイカーと鼓という取り合わせが想像力の外の出来事でいまいち現実感がない。さらにびっくりしたことに、その中のお一人がお義父さんに声をかけている。なんとふたりはオーケストラで一緒に演奏をしていた知り合いなんだって。偶然の出会いになんだかぼくまで嬉しくなった。
彼らは『八咫烏・鼓動隊』。能楽囃子大倉流大鼓の大倉正之助さんという方に師事するバイク乗り大鼓打ち奉納グループなんだって。か、かっこ良すぎる。去年なくなった祖母が能をやっていたのでぼくも鼓を打たせてもらったことがあるんだけど、まったくいい音で鳴らせなかったなあ。練習しなきゃダメだと祖母に笑われたけど、ここまでやるためには相当訓練しているんだろうなあ。素直にいいなあと思う。

速玉大社はこじんまりとしているけれど、なんかとても好きなんだよなあ。朱色に塗られた寺社を見て、最初は派手だなあと思ったけどこういうのもいい。青空とのコントラストがくっきりしていて、茶色が主体の寺院とはまた違う雰囲気だ。

それから熊野那智大社へ。せっかくなので、クルマを大門前において片道1kmちょいの行程を熊野古道を歩いて山登り。軽く汗ばむけれども森の中はとても静かで、木々の良いにおい。深呼吸したい空気ってこういう空気だね。道々に置かれた一町、二町というマイルストーンを数えながら六町でようやく大社下の道路へ出た。那智大社青岸渡寺にお参りをして、那智の滝まで降りていく。ぼくは3回目、彼女は2回目の那智の滝。あいかわらずすごい水量。水しぶきが霧のようになっていてこれまた清々しい。帰りも再びさっき上ってきた道を戻る。苔むした石の道は少し滑りやすくてなかなか大変。レンタルで平安時代の旅装束をまとって草履で歩いている女性がいたけれど、歩くの大変だろうなあ。昔は今日の都から2週間以上かけて熊野まで参ったらしいけどすごいことだ。

今日の泊まりは宇久井にある休暇村南紀勝浦。予想外にきれいな部屋からは熊野灘が眼前に広がっている。海を見渡せる露天風呂のついた広いお風呂も快適そのもの。夕食も南紀の海の幸満載で、サザエ良し、アワビ良し、カツオ良しとこれまた最高だった。二日連続でこれだけ美味しいもの食べられて幸せだー。これだけ最高なものがそろってお値段も一人15,000円程度なんだからもうなんといってよいのやら。天気にも恵まれ、3回目にして初めて熊野古道をちょっとだけでも歩き、なかなかいい1日。