柿の種中毒治療日記

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会社は頭から腐る

産業再生機構で数多くの会社の再生に携わった冨山和彦さんの著書。といってもよくある経営のハウツーではない。冨山さんの思いが伝わってくる迫力の好著。性善説性悪説ではなく性弱説に基づく実体験に基づいたマネジメントの方法論が面白い。彼の略歴は東大法学部卒、在学中に司法試験合格、スタンフォードMBA、BCG、コーポレートディレクションを経て産業再生機構COO。彼が合理性や論理を重視し高いハードスキルを持つプロフェッショナルであることには疑いはないだろう。そんな彼が重視するのがハイレベルの合理性は当然の事としてさらに『情理』である事は面白い。とはいえ凡百の精神論に偏った経営指南とは全く別もの。あくまで『情』も洞察と理解の対象であり、それをもとに実行・成功に導くための手段だ。結局合理的なプランが机上の空論に終わるのか、それとも実現されて行くのかは人間の本質である『情』の所を組み込めるかの差なのだ。

そこには善も悪もなく、言い換えればインセンティブと性格の奴隷となる「弱さ」にこそ人間性の本質がある。

こちらで働き始めてから、今までの仕事よりさらに組織のあり方について考える事が多くなった。それは部下を持つ事になったことからでもあるし、初めての組織の風土について考える機会が多いからでもある。今、自分が持っている問題意識といろいろなところがぴたりとはまった。まず自分自身がやらなきゃ行けない事。それは部下一人一人と対話をする中で彼らのやりたい方向を理解する事、そしてその中でどう彼らの力を発揮させてあげられるかだなあ。

それからもう一つ。

一流企業の中のガチンコなど所詮はゴッコにすぎない
若いエリートはあえて負け戦へ飛び込め

とのこと。今まで苦労をして来たか、と聞かれたらやはり戸惑う。もちろん苦労しなかったわけではないけれど、それでもやはりゴッコの域はでないだろう。しかも事業部としても勝ち戦の続くところにずっといたので本当に苦労したという実感もない。そういう意味では大企業ではあるけどある意味一つの『現場』であるバックオフィスのオペレーション部門を肌身で体験できるのは貴重な経験だ。せっかくだからどんどん苦労してどんどん学びたい。とくに組織をどう築いて行くのかを頭でっかちではなく体にしみ込ませていく良いチャンスだ。
そしてこれからどんどん変わって行く世界の中にあってぼくがどういう仕事をして行きたいのか問い続けたい。