柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

アルマハ三日目ー隼狩り

アルマハには二泊なので今日で最後。朝の6時半に起きて、4つ目のアクティビティに参加した。4つ目に選んだのはFalconry。Falconryというのは隼狩りのことだ。隼狩りはアラブ地域の遊牧民ベドウィンの間で昔から大変人気のあるスポーツだそうだ。ランドクルーザーに乗り込んで鳥舎へ行き、今日活躍することになる隼を車に乗せる。てっきり鳥かごにでも入れてあるのだと思いきや、車の後部座席に止まり木といっしょにほいっと隼が入って来た。すぐそばに隼の鋭い嘴が見えて少しドキドキ。ただガイドの説明によると隼の神経の80%は視神経らしく、目隠しをしたとたんにおとなしくなる。確かに羽ばたこうとするわけでもなく暴れるわけでもなく、じっとしてくれていた。

車で10分程度砂漠の中を走って高台へ。ここで隼狩りのデモンストレーション。まずは隼の乗った台座を砂にさしてみんなをお披露目。今日は5羽の隼が狩りを披露してくれる。そして隼狩りについての説明。隼狩りにつかわれる隼は天然のものではない。サラブレッドに血統が大切なのと同じく、良い血統の隼を掛け合わせることによってより速くより攻撃的な隼を生み出すのだそうだ。このうちの一羽、真っ白な羽の隼は掛け合わせの血の純度が濃すぎてものすごく凶暴なのだって。

今回の隼狩りは本物の獲物を狩るものではなく、ガイドが3m程度のロープの先に付けた餌を振り回し、それを隼が飛びながら仕留めるというものだ。しかしマスクを外されたとたん、どの隼も360°四方を見渡して獲物となる小動物や鳥がいないか虎視眈々と狙いを定める。その姿はとても精悍だ。
隼狩りにつかわれる隼は厳密に体重を管理されている。重すぎて飛べないから、という理由ではない。隼は人間に飼われていても飼い主に対して忠誠心など全く抱いていない。だからお腹いっぱいの時に放されると、どこかに飛んで行ってしまう。逆にお腹がすきすぎてもだめなのだ。お腹がすきすぎている時に放されるとやはり一目散に餌を求めて飛び立ってしまう。だから適度に空腹だけれども空き過ぎてはいないという状況を体重によって把握するのだ。その誤差は+/-10g程度。厳密な管理が必要だ。自分がこのような隼だったならなんて無意味な想像だけれども、いつも空腹感とともにありほとんどの時間鳥舎のなかにいるというのはかなり辛いな。
さて狙いを定めて飛び立った隼は上空を旋回しながら獲物を狙う。獲物を狙う時にはヒューっという風切音を立てながらものすごいスピードで上空から降りてくる。風切り音を立てずにそっと獲物に近づくフクロウとは違い、隼の武器は圧倒的なスピードだ。その速度は時速350kmを超えるのだという。獲物を狙うスタイルは隼によって異なり、大きく旋回するもの、小さく旋回するもの、低空飛行を好むものなど様々。太陽が出てくるとその光を利用して太陽を背に獲物へと迫る。スピードには富むものスタミナはそうでもない。4−5回の旋回と襲撃で疲れ果ててしまうそうな。動物にたとえるとネコ科の捕食獣って感じだ。捕らえた獲物は羽を大きく広げて周りから奪われないように守りながら啄む。その目で見てみるとスゴい迫力だ。



しかし隼にも敵はいる。鷲や鷹などさらに大型の猛禽類は恐ろしいらしい。それにつながるからか、セスナが飛んでくるのを見て騒ぎだした。隼狩りの隼は自然のものではないけれども、やはり生き物。本能というのは強くその行動パターンに刻み付けられているのだね。
体重管理票と隼用マスク。革製のマスクは一羽一羽専用につくられたものなのだ。