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柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul

沸騰都市-シンガポール

NHKで沸騰都市という番組をやっていた。今日はアジアの登り竜、シンガポール。東京23区ほどのサイズの国に人口480万、そのうちの4分の1は外国人だと言う国際都市。いまや一人当たりGDPで日本を抜き、アジアでもっとも豊かな国。金融不安のため今までの経済の牽引役だった金融による経済成長を見込むのが難しくなっている今、その時に稼いだ金でサイエンスの分野の世界の頭脳を集めるというクリアな戦略をとっているのだ。
今彼らはバイオ立国に向けて集中的に投資中。理研の比ではないサイズの研究所をどんどんと建てている。箱ものだけではもちろん無意味。国際的なリクルーティングチームを組織し、優秀な科学者には1億でも2億でも払って招聘しているのだ。金に糸目を付けないかわり、身震いするような成果主義。ここにいる研究者たちは予算制限無しで1台1億円もするような分析機器をポンっと買う事が許されている。しかし結果に対する要求はとてもシビアでNature、Science、Cellという3大ジャーナル以外ではほとんど成果が認められず、任期中に結果が出なければすぐにクビである。『知的好奇心のための科学』はここにはない。科学は富を生むための手段なのだ。
そのシビアさはシンガポールの単純労働を支えるバングラデシュやインド、フィリピンからの出稼ぎ労働者に対してもより苛烈に適応される。知的労働者に対しては永住Visaを簡単に発行するのに対し、単純労働者に対しては永住を防ぐための2年間限定のVisa。単純労働者というのはクリアに『使い捨て可能なリソース』でしかないのだ。フィリピンからのメイドたちは月3万円の給与*1。そのメイドたちには半年に一度の妊娠検査が義務づけられていて、妊娠している事が分かったとたんに法律違反でフィリピンへと送還されるのだという。法律でそんな事定めてるなんて人権団体も真っ青ではなかろうか。バングラデシュから来ている建設労働者たちもおんぼろ倉庫のようなところで詰めこまれて暮らし、とても貧しい。国が運営する派遣会社を介してしか労働する事が許されず、経済がいざ悪化したらばもちろんこういう外国人労働者から切り捨てだ。首相のリー・シェンロンが『外国人は雇用の調整弁だ』とはっきりと言い切っていたのがとても印象的だった。
集中と選択、という戦略論の教科書に踊る言葉を地でいくような明快さ。格差がある事を当然のものとして突き進む登り竜。良い悪いではなくただただ凄まじい。天然資源は何もなく、かつ地理的にとても小さな国だからこそこれだけの迷いのない戦略を取れるのだろう。これと同じような割り切り/単純で明快な戦略を日本で実行するなんてありえないのだろうし、そんなの国民の支持を集める事は不可能だろう。ただここまで極端な戦略を取る事は不可能にしても、日本でももうちょっと明快かつ一貫性のある戦略が政治にあれば良いのだけれどなあ。いつかは日本で暮らしたいけれども、改めて世界各国でしばらく暮らしてみるのもまた面白いのではないかという気がして来た。世界は広いしせっかくなら色々楽しみたい。そこでの経験と学びがもしも最終的に日本に貢献する事につながるのならそいつは素敵な話だ。
なんてことを考えていたら、きな臭いニュースが。アメリカでBuy American条項を含む景気対策法案が成立したそうな。アメリカ国内では保護主義を押す声も強いとの事。さすが、世界の田舎アメリカだ。今日の沸騰都市でも有名なアメリカの投資家ジムロジャースが『アメリカはもうだめだ』といってシンガポールに移り住んでいた事が印象的だった。さて、どうなることやら。

*1:ここフィリピンでのメイドの給与は月1万円程度だからそれでも破格なのだけれども、年間1千万から億を超える額を稼ぐ知的労働者とは雲泥の差である