柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

推定力

たちの悪い"80-20”の予測のおかげで大変面倒だった。某プロジェクトにて今後銀行手数料が毎年数千万円余分にかかると別の部門が騒いでいるのである。予算編成の関係もあり、それがすでに上の方に伝わっていて、上を何人も巻き込んでああでもないこうでもないと喧々囂々。で、トップとその部門の担当者の会議に参考意見を求められ呼び出された。根拠となる数字を見せてもらったら唖然呆然。『二つの異なる角度から概算して、ある程度の確からしさは確かめている』、というその推定の仕方がどちらもとんでもないザル推定。

  • 『対象となる取引先の数をざっくり出し、一社あたり月x回は支払いがあると仮定』したそうな。じゃあ『一社につき月x回支払う』という仮定自体どうなの?例えば1回ー3回という幅を持たせただけで計算結果の幅は1/3まで一気に下がる。1/3なら誰も騒がないって。普通に考えたらよほどの事がない限り一社に対して一月一回の支払いというのが順当な仮定な気がするけど*1、これはあくまで日本の商慣行だというのであろうか。他の国の事知らないけどさ。特定のマーケットの商慣習を知ってるか知らないかはともかく、概算結果に大きな影響を与えるファクターについては実績データに当たれば良いのにそれがされておらず「x回」の根拠がそもそも薄弱。『対象となる取引先数』も過去1年の取引実績のある取引先数をとってるけれど、重み付けがされてない。つまり一年で一回しか取引がなかったところと毎月取引しているところをどちらも一社だとカウントして、『全ての取引先を対象とし一社につき月x回で計xx回』ってやってんだけどそれでは見積もりが遥かにインフレーションしちゃうんじゃない?
  • 『 現状の支払い件数/手数料をベースに変更の影響を受けるビジネスの比率Y割をかければやはりそのくらいになる』というのが二番目の根拠。でも、そもそもそこでの『比率Y割』のベースになるコンセプトがまったく支払い件数/手数料と比例関係にあるものじゃないからかけ算に意味がない。さらに『現状の支払い件数』の中には今回のプロジェクトで全く影響を受けないものがかなり多く含まれているからそこにかけ算するのもやっぱりナンセンス。ここもちょっと頭を使ってビジネスプロセスとプロジェクトの影響範囲を考えればわかることだ。

こんなの80-20でもなんでもなくって小学生の算数でも0点だと思うけどね。ぼくの事を『細かい、もっと80-20でジャッジをする事が必要だ』とかいう前にもうちょっと頭使えってんだ、とちょっと憤りを覚える。と荒れてみつつもぼくの信念を確認できる出来事もあってそれが喜び。とりあえず、そんなにかかるわけないからデータを持ってきて証明すると約束。ところがプロジェクト担当者二人にそこのデータを取って来てといってもなかなか進まず困っていた。それをみてぼくのチームの二人がささっと話してデータを揃えてくれた。二人はそれぞれ異なるバックグラウンドを持っていて、その強みを生かしながら協力しあって異なるプロセスにまたがる問題を簡単に解決してくれる。これぞ総勘定元帳のチームとしてありたい姿。
そうそう。買掛金の担当者は頭をひねりながら面白いアプローチで概算を出してくれた。この子は頭が良くて独創的でそれもまた嬉しい。ぼくのざっくり概算と彼女の数字とぼくのチームからの数字の三つがだいたいあってるからこの件についてはこれでまあそこまで間違ってはいないだろう(つまり最初のx千万円は大間違いだ)。
日本では最近フェルミ推定がブームらしいけれど、それはなかなか良いブームである。なんてね。

*1:もしミスがあって2度も3度も一月に払ってるのならそっちの方が問題だ