柿の種中毒治療日記

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アヤラ美術館にフィリピン先史時代の黄金細工を見に行った


ふと思い立ってマカティ・グリーンベルトにあるAyala Museumに行って来た。 こちらは黄金のマスク。素晴らしいデザイン。
『フィリピンには自然はあるけれども文化がない』などという声をたまに聞く。フィリピンは長年のスペイン・アメリカ・日本による占領と破壊をうけ、文化的にはすっかりアメリカナイズされた国だ。最近では韓国文化の流入も激しく、街中では韓国語の歌が流れていたりもする。フィリピンにある5つの世界遺産もふたつはスペイン占領時代のもの*1、ふたつは自然遺産であり*2、残る一つコルディリィエーラの棚田群が唯一のスペイン占領前から続く歴史的遺産だ。昨年コスタリカに行った時にスペイン侵略前の先史時代の遺物をたくさんみてそのプリミティブだけどパワフルな土器や金細工に目を奪われたのだけれども、フィリピンでそういうものを目にしたことも聞いたこともなかった。でもAyala Museumにはスペイン人たちが来る前の遺産が残されていた。
金のバングルなどの装身具。

重さ4kgにもなるという金の糸状にして縒りあわせたもの。これだけの富と権勢を誇った支配者がいたということだ。

訪れたスペイン人が描かせたと言う当時の人々の習俗。これ以外にも色々な部族の絵が残されている。一部は体中に入れ墨を入れていたりして、エキゾチックだ。

黄金細工の他にも数多くの陶器が展示されていた。これらは中国から入って来たもの。中国から陶器を買い付けるからには当然それを支払う財力がフィリピンにあったということだろう。さらにはフィリピンの歴史をたどったジオラマなども面白い。先史時代から中国との交易時代、イスラム教の進出、スペインの侵略へと続くジオラマ。最後のコーナーは暗黒のマルコス統治時代を取り扱う特別ブースと、それを倒したエドサ革命とコラソン・アキノ元大統領をたたえるブース。イロコス・ノルテ州にあるマルコス記念館とはまったく正反対のマルコスの取り扱いが興味深い。
ここに来たことのあるフィリピン人はどのくらいいるのだろうか。客もそんなにおらず静かで良かったけれども、ここをみて自国に対するフィリピン人の意識が変わるということもあるだろう。この美術館を作ったAyala財閥はスペイン系の人々だということが少し皮肉であるけれども。黄金に釘付けになってフィリピンの近代美術にまでは時間を割けなかった。またもう一度行ってみたい。

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*1:フィリピンのバロック様式教会群、ビガン歴史都市

*2:トゥバタハ岩礁海中公園、プエルト・プリンセサ地底河川国立公園