柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul

トレーニングで文化を変える

昨年入社した中国のファイナンス部門新入社員対象の二日間のトレーニングのうち、一時間のコースを担当した。トレーニングのテーマはなぜ価格マネジメントが特に大切なのか、具体的にどう分析し、どう組織を動かし、どう実行していくのかという話である。内容としては先日読み直したばかりの「マッキンゼー・プライシング」に類似している。ここからの内容だってこの本を読めば全て書いてある。*1
幸い一時間のトレーニングは非常に盛り上がり、多くのおもしろい質疑応答もできた。また、二日間のトレーニングのうち、もっとも有意義だった・目から鱗だったという評価ももらった。最初トレーニングを頼まれたときには正直面倒だなと思ったのだけれども、自分の信じるところを組織に浸透させて行くためにはトレーニングを積極的に引き受けて行くのはとても有効な手段だと再認識。これはどこの会社でもそうだけれども、値下げによって数量増・売上高増を狙う提案が出てくることは多いもの、値上げや値引き幅の削減については大きな抵抗がある。そういう文化を変えて行くためにも若手をチェンジ・エージェントとして育て、足下から新しい価値観と文化を創っていくことが鍵となる。
他の地域の新入社員相手に同じトレーニングを担当したマネージャーと事前に話をしたのだけれど、その人は標準化された最新のトレーニングの内容には反対していて、『価格を重視するのは間違いで、売上高総額を重視するべき』だという。そのため標準化されているトレーニングはやらず、彼独自のトレーニングをやったそうだ。彼のメッセージの鍵は『価格のマネジメントではなく、売上と数量を最適化して売上金額を最大化するべきだ』という内容。彼のいうところをトレーニングで採用するべきかどうか、念のためにいろいろなコスト構造と価格感受性を仮定したシナリオ分析をしたところ、ほとんどの場合売上高の最大化が企業価値を最大化しないことが再確認できた。つまり数量および売上高総額を多少犠牲にしても価格を重視したほうが企業価値を最大化できるのだ。まあこれも『マッキンゼー・プライシング』の論文に書かれている内容の後追い確認にすぎないのだけれどね。
多くの会社において、シェアや売上総額の最大化を目的とすることが簡単な値下げで数量を追い求めることを評価する文化をつくり、結果的に企業価値を毀損してきたともいえる。それを変えて行く試みであるにもかかわらず、トレーナーが伝えるべきメッセージを変えてしまえば、みな旧来の価値観・基準で物事を進めようとするだろう。文化を変えようというトレーニングをする場合、トレーナーをクオリファイしてメッセージをきっちりとコントロールしなければ思っても見なかったブレが生まれてしまうんだなと実感。部下にトレーニングを担当させるときなどはきっちりと内容をコントロールとしようと思った次第。

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yocchi_gogo/20120102/p1]売上高=売上数量x価格だから、売上数量が5%あがるのも価格が5%あがるのも売上高の面から見れば一緒だ。でも、収益(収益『性』ではないことに注意。収益性だけを追い求めると縮小均衡してしまうリスクがあるので企業価値は最大化できない)と企業価値に対する効果は大違い。企業価値最大化を目的とすれば、売上数量や売上高の最大化を目指すことは必ずしも正しくない。企業価値算定の観点からこの解を導きだすことは容易である。見過ごされがちな値上げや値引き幅削減の機会をどう見つけて行くのかいろいろなケースを紹介した。この一年半この分野にはかなり力を入れて仕事をしたので、喋る方としても力が入る。詳しくはマッキンゼー・プライシングを読めばより深く理解できる