オリンピックイヤーだからというわけではないのだけれども、本棚からシドニーを引っ張り出して読み直していた。前回のオリンピックはちょうどフィリピンに引っ越したばかりだったうえにテレビだって放映権を各国向けに売ってるからNHKワールドでは全く見ることができず、全く記憶にない。さらにその前のオリンピックだってどういう理由か全く記憶にない。日本にはいたはずなんだけれどもな。
なにはともあれ、村上春樹さんの独特な視点から語られるオリンピックとオーストラリアの話はとても面白い。キャシー・フリーマンの優勝のくだりは感動的でもあった。でもそれと同時に負けた選手たちをめぐる箇所はさらに示唆にとんでいて勝負ごとについていろいろなことを考えさせられる。
以下引用。
もちろん僕は勝利を愛する。勝利を評価する。でもそれ以上に深みというものを愛し、評価する。あるときには人に勝つ。あるときには人に負ける。でもそのあとにも、人は延々と生き続けていかなくてはならないのだ。
言うまでもないことだけれども、この日常の中で、僕らは地べたにへばりついて生き続けていかなければならない。明日、明日、そしてまた明日。僕らは闘い続け、ある場合には途方に暮れる。でもひとつだけ確かなことがある。もし競技者が闘争心を失ったら、それは闘うのをやめることなのだ。
シリアスな話はともかく、ちょうど今同じグループで働いている女性のうちひとりはオーストラリアに留学経験があり、もうひとりはオーストラリア国籍を持つ華僑だからランチのときなんかにオーストラリアの話で盛り上がる。彼女たちに聞いたらオーストラリアの日常生活で恐ろしいのは蛇でもなくサメでもなく何と言ってもやっぱり毒蜘蛛なんだって。その辺の話も本で読み直したばかりだったのでちょっと同じ話題についていけて面白かった。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/01
- メディア: 単行本
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