柿の種中毒治療日記

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戦略サファリ『ポジショニング・スクール』

少し時間ができたので、夜ゆっくりとポジショニング・スクールについて読んだ。ポジショニング・スクールとは企業戦略といって多くの人がさっと思いつくマイケル・ポーターを中心に発展して来た学派。戦略が分析プロセスを経て形成されて行くと考える立場である。ポジショニング・スクールはデザイン・スクールおよびプランニング・スクールの流れを汲み、基本的には二つのスクールのいくつかの前提条件を踏襲する。いわく、

  • 企業の内的能力の強みと弱み、企業を取り巻く外的可能性の機械と脅威をフィットさせることで戦略を形成する。
  • 戦略形成とは意図された計画的なプロセスであり、形式的なプランニングプロセスから産まれる。
  • まず戦略ありき。また組織は戦略に従う
  • 戦略と実行は別物。

その上で、ポジショニング・スクールは『産業構造・市場構造が特有のポジションを持つ戦略を導き、この戦略が組織構造を決定する』と考える。つまり、企業の外部環境が最大の変数で、それによって戦略・組織は決定論的に決まって行くと考える学派だ。
ここではポーターやBCGなどの戦略コンサルティングファームがかつて売り込んで来た各種ツール・各種規範に対してかなり辛辣な批判が繰り返される。ぼくもポーターの本は何冊か読んでいて、自分の中でも普段の仕事の中でもある程度はつかって来たのだけれども、打ちのめされるぐらい説得力があるし、実際に一つの事業の戦略プランニング・コントロールに従事していて歯がゆいと思う点が見事に指摘されている。

以下自分用のメモ。

  • 『産業構造がその産業で戦う企業の収益性を規定し、戦略を規定する』という仮説に対する反証。同一業界内における企業間の業績の違いは、業界間における違いよりも大きい。また、この仮説のためしばしば業界・競合と言った外部状況に目を向け過ぎ、内的能力(組織のケイパビリティ構築など)が犠牲にされることがある。
  • BCGの成長率・市場シェアポートフォリオマトリックスの前提条件『マージンはシェアの関数である』が『シェアこそ全て』という誤謬を生み出している。シェアはあくまで結果であって、シェアを追い求めるというのは戦略たり得ない。相関関係と因果関係の誤謬。
  • 経験曲線の活用とその落とし穴。『素早く生産量を増やせば競合他社に対してコスト面で優位に立てる』=>『ボリュームこそ全て』という誤謬。これがポートフォリオ・マトリックスにおいて、高シェア=花形 or 金のなる木という単純な仮定のベースとなっている。しかしその一方で各種の分析が示すように、多くの場合+1ptsの値上げがもたらす利益へのインパクトは+1ptsのボリュームがもたらす利益へのインパクトより大きい。また、マトリックスによる過度な単純化は事業の将来的な魅力度や可能性を見落とさせるリスクがある。
  • 『企業がとりうる競争優位のタイプはコスト・リーダーシップかまたは差別化であり、どちらかを選択しなければならない』というのは真実か?=>このジレンマを乗り越え、差別化を実現しながらかつ低コストを実現できれば大きな見返りがある。
  • プランニング・スクールと同様、戦略作成プロセスを過度に計画的なものとするリスクがある。また『分析が戦略を産む』という誤謬。分析は統合とは逆のプロセスであり、分析によって新たな戦略は産まれない。また分析とは基本的に机に向かってデータを見る仕事だが、そこから新しい洞察をもたらす可能性のある新しい経験を得ることは難しい。
  • ポジショニング・スクールではポジションを『限定された条件のリストから選択できる』という決定論的な立場を取る。しかし、歴史上の大きな戦いでの勝利は従来の常識に従ったからではなく、確立されたパターンを破り、新たなやりかたを創作することによって産まれた。ポジショニングからイノベーションは産まれるのか?

ひとつの事業に従事し、結果を出すことを求められる中ひしひしと感じるのは机の上の『プランニング』『ポジショニング』の無力さである。もちろん大きな方針としての戦略を持つことは必要だけれども、じゃあどういう商品・サービスを作り上げて実際にそのポジションを獲得して行くのかということこそが重要だし、そうなってくると差別化をする能力であったりコストリーダーシップを実現する能力といったことが重要になってくる。
ポジショニング・スクールが与えてくれる知見は有用だけれども、その限界も浮き彫りになる。限界を知ってさらにそれを乗り越えるヒントがこの先あるのではと感じさせてくれる。続きを読むのが楽しみだ。

戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック (Best solution)

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