柿の種中毒治療日記

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戦略人事のビジョン

戦略が先か・組織が先か、という話があるけれども、組織のケイパビリティがなければどんなに美しい戦略を描こうとも絵に描いた餅である。ぼくは人事部ではないけれど、ラインが人事権を持つ外資系の会社で働いているし、自分の業績は部下の業績次第であり人事はまさに最大の関心事の一つでもある。
NKKで人事として働き、そこからGEの人事部へと転職した八木さんと、日本の組織論を代表する神戸大学の金井先生の共著。八木さんの豊富な経験に基づく実例と、それを一般化して理論的な背景を解説する金井先生のコンビが面白い。
この本は人事の本ではなく、人事の視点から見た経営の話に他ならない。内容も多岐にわたり、人事の存在意義、組織の力を最大限に高めるための手法、組織改革の実例、リーダーシップのありかたとリーダーの育成についてたくさんの面白い話がある。多少冗長だなと思う部分もなくはないけれど、わずか600円でいろんな追体験をできるんだから安いもんだ。


後々の参考のためにメモ。

  • 人間ほど生産性が飛躍的に向上する経営資源はない。機械の性能を揚げようといくら改良を加えても、生産性が一気に5倍も10倍も向上することはない。しかし人間は違う。言葉をかけ、ハートに訴えれば多くの人はやる気を出してくれる。人がやる気を出せば、その生産性は5倍にも10倍にも跳ね上がる。
  • 正しいと思うことを正しく
  • 人事とはすなわち経営だ。かつてのGEのCEOジャック・ウェルチは「CEOの仕事の八〜九割は人の問題だ」という言葉を残している
  • GEの強さは勝ちの定義がきわめて明確であること。すなわち、「グロース(成長)とリターン(利益)」。勝ちを定義するとは、勝てなかった場合には誰かが責任を取って辞めなくてはいけないということ。コミット・アンド・デリバーが基本姿勢であり「できませんでした」は通らない。勝ちの定義が明確でないと、あるときは成長が大事だといい、ある時は利益を確保せよといい、方針が二転三転して社員は何を目指して頑張ればいいのか分からない。
  • 利益を伴う成長は会社にはかかせない。利益を出せるのは社会に貢献している証拠。無理の目立つがん細胞のような「利益の伴わない成長」は会社を大きくしながら会社を弱める。
  • GEは本音を封印し、建前で働く会社。GEでは言ったことが全て、決めたことが全てである。異論は方針が決定する前に言うべきとされ、同意して決めたことは決めた通りにやる。建前=大義であり、大義の前にはいかなる本音も封印する。
  • GEグロースバリュー。External Focus, Clear thinking, Imagination, inclusiveness, expertiseの5つ。人事評価はパフォーマンスだけでなく、パフォーマンスとグロースバリューの発揮度合いの9つのマトリックスで評価する。なぜならばグロースバリューの発揮が長期的にはビジネスを成長させるためには欠かせない資質だと考えられているから。
  • GEは「失敗する社員」が多い会社。それは一人一人にストレッチした高い目標を与えるためであり、一回も失敗したことのない社員がいるとすればそれは自分の限界にチャレンジしていないから。
  • 最高のパフォーマンスを出している人は、自分の時間と仕事をする時間のバランスをちゃんととっている。そうやって自分の暮らしや家族を大切にし、人生を豊かにする時間、経験をより幅広く生かすために考える時間を持つことで仕事の生産性を上げている。
  • ジャパン・イズ・ユニーク・シンドローム。*1
  • 人事がファシリテーションに入って、その組織のつぼをちょっと押すだけで組織が活性化され、人々がやる気をだし、業績を改善させることができる。細かい戦術や技術の話をするのではなく、悪い流れを良い流れに替える手助けをする。
  • 年一回のフォーマルな業績評価より、日々その場その場でフィードバックを与える評価の方が社員の成長につながる。
  • チェンジを起こしたかったら、賛成してくれる人を増やすより反対する人を減らせ。変革はじわじわと、反対者が出ないように気をつけながら進めるべきだ
  • 組織の中で効果的なコミュニケーションができ、現場がやる気を出してくれればすごいことが起こる。浪花節も有効。「世界一の製鉄所を目指す」。
  • 転職先で最初の三ヶ月間社内の様子の観察につとめた。そして改善すべき課題を見つけ出し、トップに報告したのち周囲を巻き込んで改革を始める。
  • パーソナル・ストライビング。人生を貫く目標、生きる意味、存在価値。自分の軸・価値観を明確にする。
  • リーダーとはビジョンを描き、コミュニケーションによって人々を巻き込み、その人たち(フォロワー)とともにビジョンの達成に向けてさまざまなことを実行できる人。信頼を築き上げることは必須。
  • 一生懸命に働いて成果を出すことはリーダーの仕事としては不十分で、それは実行屋さんにすぎない。自ら問題を発見し、自ら意思決定をして、自らチャレンジしていなければ、リーダーではなくフォロワーのまま。
  • 勝利への渇望がエンジンとなる。Energy (自らが活力にあふれる), Energize (目標に向かう周りの人を元気づける), Edge (タフな問題に対しても決断ができる), Execute (実行段階で最後までとことん諦めずにやり抜く)。
  • リーダーを目指すなら、まずは簡単なことからやるべき。姿勢や声には、その人が持っている自信の度合いが現れる。胸を張って腹の底から声を出すというのはその気になれば簡単にできる。
  • リーダーは普通の人にわかる言葉で話す
  • リーダーが責任を持って、進むべき道を指し示すためには、たとえ自信がなくても後ろに下がらないという姿勢が大事。退路を断ち、リスクを取る。
  • リーダーシップの旅は努力なくしては続けられない。学ぶ努力と考える努力、行動に移す努力。
  • 上向きに影響力を行使する。上に対して影響力を持つミドルとそうでないミドルを比較すると、前者の方がこうしゃより下に対する影響力もつよくもっている。Managing your boss.
  • Action bias。行動によって物事を成し遂げようとする姿勢が企業の卓越性を表す第一の特徴。
  • 働きがいのある会社の三つの柱。信頼・誇り・連帯感。また、信頼はさらに信用・尊敬・公正の三つの要素からなる。


戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ (光文社新書)

戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ (光文社新書)

*1:これは中国でも同じである。どこだって自分たちのユニークネスを主張するけれど、結局たいしてユニークではなかったりするんだよね