柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

中国でヘリウム風船だと思って買った風船からとんでもない異臭がした話

『驚きの中国』系の話はネットにたくさん転がっている。なにかが爆発したなんて話はざらだし、道路が陥没したとかビルが崩れたなんて話もある。そこまで大げさな話はなくっても、日常生活でも異文化ならではの驚きはそこここに転がっている。ただそれをネタにするのはなんだか気がひけで、そういうことは日記に書かないようにしてきた。あくまでそれは日本人のぼくの視点から見ての違和感であって良い悪いといった問題ではない。フィリピンで暮らしていた時だって『驚きのフィリピン』的な体験はあったし、結局のところ程度問題でしかないとも思う。日本国内でだって西と東でおでんのタネが全然違うなんてこともあるし。それをサプライズだと思うかどうかというのは距離感の話だよね。ただ、今朝のちょっとしたサプライズにやっぱり彼我の差を強く感じた。結局のところ埋められない差っていうのはやっぱりある。


きっかけは先日街角で買ってきたアングリーバードのヘリウム風船。昨今ヘリウムガスの世界的な供給不足が話題になっていて、東京ディズニーランドではヘリウム風船の販売が無期限停止中だなんて話は聞いていた。けれども、広州の道ばたではそんなニュース全く関係ないように風船売りのおじさんが立っている。一個あたりわずか5元、日本円にして75円である。もちろんキャラクター使用のロイヤルティーなんて払っている訳が無いからそこらへんも安い理由だとしても、それにしても安い。


で、その風船。ガスが抜けてきて浮力がなくなってきたので、捨てることにしたのだ。今朝妻が風船にはさみを入れたところ、部屋中に凄い異臭が広がった。なんともいいようのない、吐き気を誘う悪臭。部屋で常に回っているダイキンとパナソニックの二台の空気清浄機は一斉にランプが赤く変わって、風力アップ。ヘリウムって無臭じゃなかったっけ?すぐに窓を開けて換気を計り、ベッドルームに避難。10分経っても20分経ってもなかなか臭いが収まらない。なんかこの臭い、昔化学の実験で嗅いだことがあるような気がするな。実はヘリウムガスなんてそもそも使われてないのではないのか?


ヘリウムガスの代わりに使われていそうな気体は何だろう。空気の平均分子量は28.8だからそれより軽い気体。筆頭は水素ガス(H2、分子量2)だけれども、水素製造時にこんな臭いがつくことはなさそうだ。おそらくメタンガスあたりが使われていて、製造時の不純物がこういう臭いになっているんだと思う*1。メタンだったら合成可能だし、ヘリウムの供給不足なんて全く関係ないもんね。恐ろしいのは、メタンはすごく可燃性が高いということ。


ふとそこで思い出したのが、春節のときの街中での乗り合いバスでの光景。確か、風船を持った家族が運転手に乗車拒否されて、風船は持ち込み禁止だと言われていたのだった。あの時はヘリウムには火はつかないしどういう理由で禁止なのだろうと不思議に思っていたけれど、中国で出回っている風船の中身が可燃性ガスなのだとしたらそりゃあバスには持ち込み禁止になる訳だ。


風船の中にわずかに残ったガスだったから部屋の中に充満するにはいたらずに特に問題はなかったけれど、娘が風船を持って歩き回ってキッチンで引火したりしたらとんでもないことになるところだったかもしれない。30分経ってようやく臭いのもとのガスが換気されて空気清浄機のランプも正常に戻った。軽く頭も痛いし、朝からちょっとした騒ぎ。結局のところ、安全性などということは二の次なのだよな。二度と街の風船売りから風船を買うことはあるまい。

*1:他にはネオンNeも考えられるけれど、ネオンは希ガスで化学合成ではできないからこんな臭いの不純物は混ざらなそう。またアンモニアも空気より軽いけれども、アンモニアの臭いでは無かった。アセチレンあたりも不純物が臭いらしいけれど、分子量が26だからちょっと風船を浮かばせるには重いかも