柿の種中毒治療日記

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半沢直樹はやっぱりファンタジーだと思う

遅ればせながら『半沢直樹』について。視聴率はうなぎ上り、『爽快だ』ともっぱらの評判らしい。というわけで今更ながらあらすじ・ネタバレを読んでみたのだけれど、これってどこが爽快なのだろう。むしろぼくの職業柄か、モヤモヤする点の方が多い。銀行員ではないけれど。
半沢直樹(とその部下達)が上司になすり付けられそうになった不正融資・焦げ付きの裏を暴くという流れらしいけれども、

  • 不正融資の調査を監査担当の専門部署に連絡・委任している形跡がなく、直接の関係者(半沢直樹とその部下)が秘密裏に行っている。無実の罪を着せられた被告人が脱獄して真犯人を探すというプロットに近いけれども、日本を代表する都市銀行で罪をなすり付けられた部下がこうせざるを得ないとしたら、内部統制のシステムが存在していない・有効に機能していないってことだよね。
  • 銀行外の人間(不正融資・計画倒産に巻き込まれて倒産した会社の社長)を協力者として巻き込んでいる。ドラマ的にはそういう人間が話に入ってくることでダイナミズムがでてくるのだろうけれども、内部統制違反の調査で外部の利害関係者を巻き込むなんてあり得る?
  • 半沢直樹とその部下達は見事に上司の不正の証拠をつかむ。にもかかわらず最終的にはその不正をうやむやにし、その見返りとしてそれぞれが出世。この時点で半沢直樹&その部下達もガバナンス・コンプライアンス違反じゃない?

とくに三つ目。半沢直樹は正義でも何でもなく単に自分の利益のために行動しているだけなのだろうけれど、相手の弱みをつかんでそれをネタに見返りを得るなんて、反社会的団体の手口と変わらない。最終的には半沢直樹の活躍によって銀行は貸付金を回収したし、『支店長の家族を思いやって』という話なのかもしれないけれど、じゃあ何をやってもいいのかって話。


ルールやプリンシプルを重視せず、まっとうなシステムも存在せず、被害を受けた個人が独力で問題を解決し*1、やり返すのが爽快だという評判を得てるのだろうか。法治主義ではなく、人情ベースの人治主義と私刑が受けるってのは恐ろしい話。裏返せば日本ではプリンシプルよりも、その場の関係者のメンツや感情が優先されるということに他ならない。ドラマに細かいこというなって話なのかもしれないけれども、オリンパス事件とか、大王製紙の背任の事件を見ていると、実はこういうのってままある話だったりして。

それからこのドラマ、銀行内部の政治的な争いのシーンばかりみたいだけれど、これはあくまでドラマで現実にはこんなことばかりやっているのではないと願いたい。銀行で働いたことがないので、これは切なる希望である。

なんてことを思っていたら、Newsweek Japanで『ドラマ『半沢直樹』は、あくまでファンタジー』という記事を発見。面白い。
ドラマ『半沢直樹』は、あくまでファンタジー | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

*1:もしくはほとんどの場合泣き寝入り