柿の種中毒治療日記

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『ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか』

ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?

ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?

とても面白い本を読了。タイトルは若干誇張が入っている。『食べさせた』というのは少し言い過ぎで、実際には『ローマ法王に献上した』のが適当。だけれども、このタイトルは高野さんの方法論をうまく表している。『献上した』では、いまいちインパクトに欠ける。『食べさせた』という言葉にしても、『スーパー公務員』にしても、このくらいキャッチーだと人の心をぐいっとつかむものね。

彼はとにかくメディアを使うのがうまいのだ。しかもお金をほとんど使わずに、パブリシティを利用する。例えば、過疎の村『神子村』の農業を再生させる取り組み。彼は農協を経由せずに直接消費者に販売し、自分たちで価格をつけることで農家の収入を上げる事を提案する。そんなことをしたことのない農家には猛反対され、『やれるものならやってみろ』ということになって自分たちで販売する事になるのだけれども、そこで利用したのが『神子村』という神々しい名前。これを半ば強引に神の子=キリストと結びつけ、ダメもとでバチカンに連絡を取り、見事に米をバチカンに献上する。それをいろいろなメディアがニュースとして取り上げてくれる事により、ただ同然で知名度を上げブランド化に成功して販売に繋げたのだ。

また、『売りたい時に売らない』ことにより、希少価値を高める。お金持ちからのオーダーにはわざと品切れということにして、『デパートになら有るんではないでしょうか』と返事をする事でお金持ち経由でデパートのバイヤーを動かす。交渉に来たバイヤーに対しても、足下を見られないための工夫を凝らす。交渉の主導権を常に握るため、値引きはほとんどせず、販路となるデパートも毎年変える。あえて少量しか売らない事でプレミアムを維持するなどなど、いろいろ工夫が一杯だ。

公務員になる前の彼の経歴は大変面白く、もともとテレビの構成作家をされていた。だから、マス・コミュニケーションの力を良く知っている。この本の中にも、かれがアメリカCIAのロバートソン査問会のリポートから、人はどうしたらなびいてくれるのか、一つの方向に大衆を動かすにはどういう戦略をとればいいかを学んだ旨のことが書いてある。しかしそれだけではない。とにかく行動力が半端ない。お金がなくても、アイディアをひねり出す事で逆転してしまう。さらに、失敗するリスクを恐れて行動できない人たちを自分で見本を見せ、さらに相手にやらせる事でぐいぐいと巻き込んで行く強力なリーダーシップも持っている。鍵を握る人物をみつけ、そのキーマンには事前に根をまわしたりという政治的なコミュニケーション能力も抜群だ。この本はそれ以外にも彼が取り組んで来た取り組みが数多く語られている。役所の世界ではものすごい異端なのかもしれないけれど、こういう人が増えれば面白いだろうな。

さて、ぼくの仕事は下手をすると評論家のようになってしまいがちな間接部署だけども、そうならないようにしなきゃな、と思った次第。

お言葉

千回会議をしたら村は変わるんですか?会議をしているだけでいい仕事をしたと勘違いしちゃってるんじゃないですか?会議やめました。計画書も分厚いものを作るんです。けれど何百頁の計画書を作ったら村が変わって行くんでしょうか。変わりません。

内輪の人間でなくてよそ者に語ってもらう事で、初めて気がつくんですよ。組織でもそうです。だから外からものを見る見方、外からの援護射撃を取り入れて行ったんですよね。

じっくり考えるというより、走りながら考えます。動いていないと不安になるんですよ。で、失敗したらどうしようとは考えないんですよ。頭の中では成功した時のイメージしか描かない

「売れなんだらどうするがいや!」「売るように努力するだけの事なんですよ」

とにかく1%でも可能性があるなら、徹底的にやってみよう

どうしたらマイナスとなったところをプラスとしてとらえるか?ということです。どうすれば建設的に考えられるかというと、一度喜んでみるんです。そうすると知恵が湧いてくるんです。

(失敗をして)責任を追及したところで、なにも産まれません。ならばどこかで発想の転換をしなくては行けない。だから喜ぼうと思って拍手したんです。無理矢理にでも喜んでみたんです。手が痛くなるほど拍手し続けたら、なんだか悲観的に考えるのがばからしくなってきました。さらに手を叩き続けたら、急にあることがひらめいたのです。

可能性の無視は最大の悪策である