柿の種中毒治療日記

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Think Simple

Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学

Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学

先日買った本。早速読み始めたものの、序盤の言葉に反発してしまって先に進んでいない。曰く

生命は、分子と水と太陽光が正しく組み合わされば自然に発生するが、シンプルさはそうはいかない。熱烈な擁護者が必要だ。つまり、シンプルさの原則をすすんで支持し、シンプルさの双子の兄弟で邪悪な<複雑さ>の誘惑に抵抗できるだけの強い人間が必要なのだ。

はあ???

分子と水と太陽光が組み合わさって単純な生命ができて、現在の形になるまでに気の遠くなるような年月と進化圧がこの複雑極まりない生命体を作り上げたのだ。数年-数十年のスパンの話とはまったく桁が違う。計算機科学も生命科学もどちらもものすごく進歩したし、コンピュータによって人間の生産性が飛躍的に変わったのは事実だけれども、コンピュータをプログラムするように生命をボトムアップで作り上げられるなどという人はいない。万能細胞やクローン技術はあっても、それは生命のブラックボックスを解明したからではない。生命の「複雑さ」は、人間がすべて解明するには(少なくとも現時点でという留保はつけるにしても)複雑すぎる。

人間がやれるレベルのことなら、「複雑さとシンプルさならシンプルにする方が難しい」ということには同意する。なので、この本の本質にはまったく関係がないところで読むのをやめるというのも馬鹿げているとは思いつつ、久々に反発心。自分の得意とする領域以外の話を持ち出して、説得力を失うというのはこういうことかと思う。そんな余計な例えはいれずにシンプルに謙虚に自分の分野の話をしておけばいいのにね。そのうち反発心が冷めたらこの部分はすっ飛ばして読むかもしれない。