木曜日。ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』を読み終えた。これまで積ん読だった本をかたっぱしから読んでどんどん断捨離していこうと思っていたのだけれど、思いがけず再読しようという本にいきなりぶつかった。
奥付けを見ると買ったのはもう15年以上前。前半の少しセンセーショナルな内容に、当時のぼくは途中で読むのを止めたままだった。15年経って自分もそれ相応の年になり、そのセンセーショナルな部分をすんなりと受け入れて第一部を読み終え、その先の第二部は重くのしかかってくる内容。夢中でページをめくり、一気に読んでしまった。
名著『夜と霧』は収容所に収容された側の心理学者による、重くしかし素晴らしい本。『朗読者』はその向こう側、ナチスの収容所に看守として加担してしまった人と、その人を愛してしまった主人公の物語。『向こう側』にいた人もまた一人の人間であり、モンスターでもなんでもないのだね。その事実があったからといって戦争犯罪が減免されるわけれではないけれど。それでもやはりあちらとこちらは地続きなのだと思う。自分を一方の場において他方を断罪するのは簡単だけれども、ハンナが裁判長に聞いた『あなただったら、どうしましたか?』という問いはとても重い。そしてそういう人のそういう側面を知ってしまった主人公の葛藤。自分だったらどうする?やはり答えはすぐにはでない。
- 作者: ベルンハルトシュリンク,Bernhard Schlink,松永美穂
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05/28
- メディア: 文庫
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