柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

凍てつく太陽

最近、続けて読んでいる葉真中顕さんの小説。今週末は『凍てつく太陽』を読了。終戦間際の北海道が舞台で、主人公は特高警察官。日本人、アイヌ朝鮮人徴用工など色々な人たちが絡み合う。そしてガダルカナル

スケールが大きな話で、話が二転三転。夢中になってあっという間に読みきった。陸軍がひた隠しにする「軍事機密」のオチには肩すかしを喰らった感はあるけれど、でもそれもまた日米の科学力の差を考えると妥当だったのだろうし、しっくりくるエンディング。

「案外、服みてえなもんかもしれねえよ、国だの民族だのってのは」という言葉が心に残った。

 

昭和二十年、終戦間際の北海道を監視する特高警察、通称「北の特高」――。
彼らの前に現れた連続毒殺犯「スルク」とは何者か。陸軍がひた隠しにする「軍事機密」とは。
そして、真の「国賊」は誰なのか? かつてない「特高」警察小説!

逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密「カンナカムイ」をめぐり、
軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は捜査に加わるが、「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影に濡れ衣を着せられ、網走刑務所に投獄されてしまう。八尋は特高刑事としての「己の使命」を全うするために、脱獄を決意するのだが――。民族とは何か、国家とは何か、人間とは何か。魂に突き刺さる、骨太のエンターテイメント!

 

凍てつく太陽 (幻冬舎文庫)

凍てつく太陽 (幻冬舎文庫)

 

 

 

ロスト・ケア

葉真中顕さんの『ロスト・ケア』を読んだ。介護の世界を題材とした社会派ミステリー。

僕にはまだ介護の実体験がないけれど、父母は祖父母の介護をしていた/している。電話越しに少し話を聞いて、大変そうだなと思っていたけれど、まったくその大変さをイメージできていなかった。

この小説の中で描かれる介護のシーンを読んでいると、介護の負担が家族にとってどれほど重いのかをひしひしと感じる。認知症によって性格も変わり記憶もあやふやになり、暴力さえありうる。その相手が他人ならば逃げれば良いのかもしれないけれど、親であればそういうわけにもいかない。

お金があればまた別だけれども、そこで必要なお金を出せる人がどれくらいいるのだろうか。試しに横浜市の有料老人ホームで認知症でも入居できる老人ホームについて検索してみたら、月額プラン40ー80万円という目の玉が飛び出るような金額が並んでいた。

横浜市の認知症でも入居できるホーム一覧|ベネッセスタイルケア

相手の同意なしに勝手に判断し、そういった介護対象の老人を殺して回る「彼」は殺人者としか言いようがないけれど、じゃあ相手の同意があったらどうなのだろう?その同意が本当に自発的なものであるかどうかどう担保するのか?

社会派ミステリーなのでミステリー要素もあり、見事に作者のミスディレクションに引っ掛かったのだけど、ミステリー要素以上に登場してくる人々の言葉が重い小説だった。

ロスト・ケア (光文社文庫)

ロスト・ケア (光文社文庫)

 

 

 

W県警の悲劇

先日読んだ『絶叫』が面白かったので、同じ葉真中顕さんの『W県警の悲劇』を読んだ。帯にある通り、警察小説xどんでん返しの組み合わせの短編集。洞の奥、交換日記、ガサ入れの朝、私の戦い、破戒、消えた少女の全六編で、全て女性警察官が主人公。

叙述トリックが面白い。一章読んで、あれっ?となって騙されていたことに気づき、そこに戻ってまた読み直す。『破戒』以外は全て一本取られた。最後はなんというか、良い意味で唖然。

どうやら昨年BSテレ東でドラマ化されていたよう。ドラマ化で多少それぞれの女性警察官の役割は変更されているみたいだけど、面白そう。NetflixAmazon primeでも流してくれないかな。

W県警の悲劇

W県警の悲劇

 

 

 

絶叫

あっという間に8月。今年は帰省もしないのだけど、家の外もとても暑くてなかなか外に出る気にもなかなかならない。クーラーの効いた部屋で読書。

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

 

 

葉真中顕「絶叫」を読んだ。昔はてなダイヤリー罪山罰太郎名義で書かれていたブログは読んでいたのだけど、小説家デビューされたことは知りつつこれまで手にする機会がなかった。

朝、娘の付き添いで病院に行った待ち時間に読み始め、その面白さに午後も家で夢中で読んで夕方には一気に読了。

Amazonの紹介曰く、

平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。
猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか?
社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!

時系列にズレがある異なる三者の視点で語られる話が紡がれて、しだいしだいに輪郭が見えてくる。その中で語られる主人公鈴木陽子の人生。母親から愛されず、父親は失踪し、本人は平凡。平凡にもかかわらず人生を平凡に恙無く過ごすことは叶わず、どんどんと物事が悪い方へと向かっていく。その中で実は。。最後の大どんでん返しは暗澹たる気持ちになる一方で、ある意味痛快でさえある。

いまこうして日々をクーラーの効いた快適な部屋で過ごしているのはたくさんの偶然と少しばかりの幸運のおかげなのだろう。でもそれはいつまでも続く保証があるようなものではない。自分たちに、子供たちに、そして周りの人たちにも幸多からんことを。

県境をまたいでの移動の自粛解禁である。自粛解禁というのはいかにも日本的な表現だ。自粛というからには自分の判断でリスクをとって行動することになんの問題もないはずだし、『解禁』の対象になるようなものではないと思うけど。解禁だろうがなんだろうが、気を緩めるのではなく適切な行動を取り続けないといけない。

転職して日本に戻ってきて一番驚いたのはこの回りくどい言い方だった。『〜することを検討してください』というメール。これを読んだ上で検討し、自分の判断でやらないことにしたのだ。その結果、困ったことになった。そんな曖昧な表現をせず、『〜してください』『〜するように』でいいのに。なにかとSpecificityにかける表現が多いのだよ。自主性に任せているのか、単に責任の曖昧化なのかどちらだろう?

 

愚痴っぽくなってしまった。この2ヶ月半、自分の判断でほとんど家から出なかった。スーパーに行ったり、家の周りを散歩したりはしたけれど、そのぐらい。子供達も家にいる時間が長く、オンライン授業は続いていたけれどやはりほとんど家にいた。ぼくも1日3時間の通勤時間がゼロになって、家族がとても近く、仲良くなった。禍福は糾える縄の如し。

娘はそのおかげか本好きになったみたい。いまは銭天堂シリーズを夢中になって読んでいる。こないだまでは『おしりたんてい』だったのにね。今日それで銭天堂の続巻を買いに行った紀伊国屋書店で手に取ったのが『の』。とても綺麗な挿絵。『わたしの お気に入りのコートの ポケットの中のお城の いちばん上のながめのよい部屋の 王さまのキングサイズのベッドの……』とどんどん続いていく。一つのページの要素をズームアップして、どんどんミクロの世界に入っていく。『の』でつながって、その先、その先に続く素敵な世界。そして最後は。。最高の絵本。

『の』に触発されて、今から四半世紀前高校生の時に田舎の本屋で注文購入し、それからずっと大事にしている『パワーズオブテン』を久しぶりに本棚から引っ張り出してきた。『の』の世界と同じように、でもこちらはサイエンティフィックに10の25乗の宇宙から10の-16乗の素粒子の世界までの旅。久しぶりに読んだけれど、やはりわくわく。

日本の都会で暮らしていて何より嬉しいのは本屋に行ってたくさんの本に出会えること。最近はずっとAmazonで買い物するばかりだったけど、実物の世界にしかないものもある。感染対策に気をつけながら、実物の世界に再び少しずつ出ていきたい。

 

の (福音館の単行本)

の (福音館の単行本)

  • 作者:junaida
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 単行本
 

 



 

 

 

 

 

平民金子『ごろごろ神戸』

平民金子さんのエッセイ、ごろごろ神戸を読んだ。何気ない神戸での生活をつづったエッセイ。

ぼくは2003年の夏に神戸に引っ越した。2005年に当時のはてなダイアリーで日記をつけはじめ、結婚し、そのあと2008年の夏に神戸を去ってマニラに移った。

神戸で暮らしていた時のぼくの行動範囲は三宮から東側がほとんどだったからわからないことも多い。その代わり記憶の中に眠っていた保久良神社あたりの様子や渦森台、芦屋川沿いや、夙川の景色、なんども通った焼肉たじまや、六甲山から見下ろした街の景色や、六甲アイランドの様子が浮かんでくる。

あのころはまた神戸に戻ってくると思っていたけど、そのあと9年海外を転々としてそのあとは横浜にやってきた。横浜も神戸もなんとなく似ている。山手公園山下公園の辺りを歩くのはとても楽しい。六甲山みたいな手頃な山が身近にないのだけが残念だけれど。

日本に帰ってきていろいろ忙しく、気楽なTwitterを眺めているだけで自分からこうやって日記を書くこともあまりなくなった。でも自分が10年前に書いていた記事を読むと、あの頃の気持ちが少しだけ蘇ってくる。

一期一会。コロナウイルスが落ち着いたら、子供達を連れて神戸に行ってみたいな。

 

ごろごろ、神戸。

ごろごろ、神戸。

  • 作者:平民金子
  • 発売日: 2019/12/10
  • メディア: 単行本
 

 

 

ミニチュア菜園

新型コロナウイルスの外出制限などでガーデニング人気が高まっているなんてニュースをみた。マンション暮らしのぼくたちには庭があるわけでもなく、プランターや土もなく。ただ世の中いろいろなやり方があるらしい。水に浸したキッチンペーパーの上に人参と胡瓜、それからアルストロメディアの花とった種を並べてみた。一晩たって、にんじんのヘタから緑の茎と葉が伸びてきた。ミニチュア菜園。どこまで大きくなるのかな?

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