柿の種中毒治療日記

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企業スローガンについて考えてみる

企業のビジョンや目的をきっちり明文化して共有すること。これってとても大事だ。特に異なるカルチャーの人間が集まってくる外資系企業では、カルチャーが異なるからこそ同一のビジョンや目的を共有できるかどうかが鍵になってくる。diversityを高めることによって企業の成長を促すというのが流行のようだが*1、diversityを高めながらどれだけ組織の構成員の向いてる方向を揃えられるかというのは相当なチャレンジだ。この場合、コーポレートレベルでのビジョンに始まって各organizationのレベルでいかに整合性を保ちつつ、ご当地のニーズやフォーカスエリアをカバーできるないようにできるのかがとても重要。あまり数多くのコンセプトをつくっても組織内に無用な混乱をおこすし、あまりに抽象的でも解釈がバラバラになってまずい。各メンバーの行動の柱となるべきものだから熟慮が必要だと思う。
とまあなぜこんなことを考えたかというと、たまたま車検のために車を持って行ったフォルクスワーゲンのディーラーの事務所に張ってあったスローガンが振るっていたから。いわく『収益への執着心』。なんだか吹き出してしまった。今回の車検は30万もかかってしまったんだけど、これもまた彼らの『収益への執着心』の賜物かと疑いたくなる*2。日々コーポレートファイナンスの仕事をしていて収益性への執着はある僕だけれども、このスローガンはどうなんだと言いたくなる。企業の目的のひとつに株主価値の最大化があり、そのために収益性を重視するというのはとても大切だけれど、これを現場レベルのスローガンにするというのはどうよ?
収益性というのは卓越した品質やサービス、ホスピタリティ、もしくはそのブランド経験に付随して顧客が『喜んで』支払う対価の結果であるべきだと思うし、現場レベルでまずしなければいけないのはそういうブランド体験を顧客に感じさせるための仕組み作り、それを実行する組織の意識改革じゃないかな?『収益性への執着心』という墨書きの大書が狙っている従業員のアクションってなんなんだろう?『企業の目的は株主価値の最大化』というのは真実だとしても、それで組織が正しく動く訳もなく、それを実行して行くための仕組みづくりこそが大事だな。フォルクスワーゲンのウェブサイトにある『クルマへの熱い思いをあなたに』というブランドスローガンからかなり乖離していることだけは確かだ。

*1:といっても、有り体に男女のジェンダーバランスを高めること=diversityだと定義するのははなはだ浅いと思うが。とはいえ、ここからスタートしなければいけないくらいdiversityを高めるというのは難しいことなのだろう

*2:まあ、もう10年ものだしこのくらいかかるんだろうと冷静には判断できる訳だが