柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

バリ初日、ケチャに酔う

朝、鳥のさえずりで目覚めてカーテンを開けると、そこは熱帯の渓谷だった。空の青と、渓谷の緑と、咲き乱れるハイビスカスの赤色が眼に飛び込んでくる。彼女はベットでぐっすり寝ているようなので、一人プールサイドでぼーっと過ごす。ハイビスカスの蜜を吸いにやってくるハチとか花アブだかの羽音に耳を傾け、ヴィラにやって来たトンボを眺めているといつもとは全く違う時間の流れに身を置いている感じ。カメラを取り出して、レンズ越しに見るとハチもトンボも全く違って見えてくる。


遅めの朝食はヴィラ内で。ナシゴレンとミーゴレンというベタだけど順当なメニュー。これがなかなか美味しい。そうこうしているうちに、突如空模様が変わって激しい雷雨になった。大粒の雨で渓谷は一気に靄に包まれる。もともと外出する気はそんなになかったので、ソファに座ってただただ本を読む。お昼もテラスレストランで靄のかかる渓谷を眺めながら。絶景だ。
とはいえここはバリ。3時間もするとあれだけ激しかった雷雨も嘘のようにぴったり止んだ。そこで居心地のいいヴィラを抜け出てウブドの街に行く事に。ヴィラからウブドの街へは車で15分。なんだか下界に下りて行くという言葉がぴったりだ。2時間ばかりすっかり変わったウブドの街をぶらぶらして、夜7時半からいよいよ今日のお楽しみ、ケチャ。ウブドパレスからスウェタ通りを少し北上したところでAdat Sambahan(アダットサンバハン)のケチャとファイヤーダンスを見る。

実は街中を歩いていて、パサールの周りのきらびやかなショーウィンドウとけばけばしいネオン管に圧倒され、10年間で激しく進んだ『文明化』というか『西洋化』に正直戸惑っていたんだけれども、ケチャを見ているとケチャの持つバリ的なもの、呪術性そのものというのは何ら変わらないなーなんてちょっと一安心。もちろん、公演自体は観光客相手のものだから観客受けのためのパフォーマンスもあるし、ケチャ自体土着のものを基に西欧人が作り上げたものだからホントの意味で呪術的なところは薄まっていると思う。それにあれだけフラッシュが焚かれると本当のトランス状態になんかならないだろうなとも思うんだけど。*1それにしても百人という大集団が4つの異なるリズムを組み合わせて作り上げるうねりと、その中で繰り広げられるストーリー。最高だ。
そして真夜中。一人再びヴィラのプールサイドで夜空を見上げてみた。頭上に輝くオリオン座というのは南半球ならではの光景。でも、肉眼で見える星の数は記憶の中にあるウブドの夜空に比べるとずっと少なくなっていた。10年前は電気も来てないところがかなりあったくらいで本当に夜は漆黒、空一面に星が見えたんだけど。いまや街全体が明るくなっている事に加えて、ベモくらいしか走ってなかった道をたくさんの車が走ってるから空気が前より汚くなっているのかな。それから僕の視力も落ちている事もあるのだろうと思いつつベットに潜り込んだ。

*1:そういうオーセンティックなものを誤った方向に求めると、宗教という世界から逃れられなくなってくるのではなかろうか。くわばらくわばら。