柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

レイドバック

前日のセンチュリーライドから一夜明け、朝8時に目が覚めた。意外にも筋肉痛は大した事がなかった。ただし昨日の夜にBENGEYっていうクリーム状のPain Removerをかなり塗ってマッサージしておいたからその分シーツにはメンソールの臭いが染み付いて鼻を刺激した。シャワーを浴びて石鹸で丁寧に体にも残っているその臭いを洗い落として遅い朝食へと出発。今日はちょっとワイキキ中心部を離れて、カピオラニ公園の側にある『ハウ・ツリー・ラナイ』へ行く事にした。彼女が昔から行ってみたいと思っていたレストランなんだって。

カピオラニ通りの舗道を離れて、公園の芝生の上やビーチの上をのんびりと歩いているだけでも昨日酷使した体がちょっとずつ回復して行く気がした。やっぱり体疲れてるんだな。路面の固さ、あるいは柔らかさが体に伝わってくる。芝生の上を歩いている分には裸足で十分だ。


10分ばかり歩いていると、ワイキキビーチの喧噪が嘘のようにどんどん人が少なくなっていった。ダイヤモンドヘッドの方から海へと吹き抜ける風が心地いい。その風のせいかワイキキビーチ沖より多少は高い波に乗ろうと沖の方に浮かぶ初心者らしきサーファーの群れが。何度もトライする彼らをのんびり眺めるのもまた楽しい。

『ハウ・ツリー・ラナイ』はニューオータニ・カイマナ・ビーチ・ホテルの中にあった。といっても道に看板が出ていた訳ではなく、だいたいこの辺りだとしか調べてなかったので一瞬迷った。ホテルのベルデスクに"How can I get to..."って尋ねかけたら、店の名前を口に出す前にホテルの中に入って奥まで歩けば目当ての店だとそのおっちゃんに先手を打たれた。いつもその質問をされるんだって。だからといって看板をわざわざ出したりしないのがハワイ的なのかどうなのかはわからないけど。

こじんまりとしたホテルのロビーをビーチサイドに進んで行くと、海辺にやはりこじんまりとしたテラスと30席弱のテーブル。真ん中には大きな一本の木が生えている。この木がハウ・ツリーらしい。横に大きく枝を広げていて、その下はいかにも涼しげ。運のいい事にその木の真下、ビーチからすぐの席に空きがあってそこへと案内された。メニューをのんびりと吟味して、無難にパイナップルジュースとグアバジュース、一番のおすすめだというエッグベネディクトとチキンオムレツを一品ずつ注文した。
注文の品が届くまでしばらくコーヒーを飲みながら海の方へとただぼーっと視線をやる。

その瞬間に胸の奥の方がふわーっと開いて、全身に心地よい脱力感が広がって来た。ああ、この感じ。久しぶりだ。今回はハワイに来てから昨日までなんだかんだでセンチュリーライドへ向けての緊張感があったのか、一度もこの感じがやってこなかったんだけど、これを待ってた。放電しているのか充電しているのか、どちらの言葉がしっくりくるのかよくわからないけど、自分の中に溜まっていた疲れとかが消え失せて行く感じ。なぜだか突然、持って来ていたのに全然読みたくならなかったハードボイルドワンダーランドの色々なシーンが一気に戻って来た。ハードボイルドワンダーランドの不思議な世界はこの感じに絶妙な相乗効果をあげてくれるんだ。

彼女とは神経伝達物質の話だとか、脳と心の話だとか傍目から聞いてたら全然場にふさわしくなさそうな会話をしてたんだけど、心は本当にくつろいでた*1。いつの間にかやってきた食事もおいしかった。だけど、食事のおいしさより何より、この静かな風景がいいんだろうな。うーん、これがレイドバックってかんじかしら。

*1:いやいや、胸がすっとするのは単なる身体反応か。