柿の種中毒治療日記

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象の消滅

今日はLabor dayだったのでドライバーにも休みを取ってもらって家でのんびり。32歳になって初めに読み終わったのは村上春樹の『象の消滅』、アメリカのクノップフ社という出版社がセレクトした村上春樹の短編集。ほとんどのものは別で読んだことがあったのだけれども、また雰囲気が違う。装丁もとても素敵な本だ。
ほとんどの短編はオリジナル日本語版をそのまま収録しているのだけれど、『レーダーホーゼン』だけは英訳されたものを再び日本語訳し直すという手順を踏んだそうだ。一度英語というフィルターをかけ直してふたたび日本語に訳し直しているからか、以前オリジナル版を読んだ時よりもすっと腑に落ちるような気がする。といってもほかの作品にたいしても以前に受けた印象とは違う受けとりかたをしているのだから、別に言葉の問題ではないのかもね。前に読んだときよりもぼくが年を取った分だけ、受けとりかたが変わったのかもしれない。
なんにせよ、読み手のぼくが32歳であるというのは自分自身静かな驚きだ。この短編集の中にも10年前を振り返るものがあるのだけれど、22歳のときのぼくもやっぱり村上春樹を読んでいたんだ。語り手である『ぼく』は多くの場合、当時のぼくよりも年上だった。そして10年経って、今ではぼく自身が語り手の『ぼく』くらいの年齢だったりする。22歳、大学4年生だった1999年という年がなんだか懐かしい。友達の死や別れなんかの悲しいこともあったけれど、新しい出会いやちょっとした嬉しいこともたくさんあった。そして当時予想もしなかった色々な出会いがあって、ぼくはいまむかし想像もしなかった場所で暮らしている。これからも色々な場所で、色々な素敵な出会いがあったらいいなとワクワクするね。

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991