柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

振り返る・前へ進む


恩師の退官記念講義に行ってきた。門前の小僧だったぼくがその道から離れ、全く関係のない仕事を選んで十年余。今後の仕事に直接役に立つということはないと思いつつ、何かインスピレーションが得られるのではないかと思って日本に帰ってきた。その期待を大幅に上回る充実した一日。

  • 科学的なアプローチ・思考の枠組みの汎用性
  • 一つの中心的なテーマに沿って研究を派生させる。幹となる中心仮説があるからこそ枝葉も大きくなる。数々の相補う研究成果が出てくることによって現象の本質を広く、深く掘り下げていける。
  • 長期的な視野を持った仕事への取り組み。成果が出るのに数年の時間がかかることもある。正しい目標と信念を持って粘り強く取りくむ。
  • 研究に挑むスピリット。実験がうまくいったからといって喜びすぎず、また実験が失敗した時にも落ち込みすぎない。失敗の中に次の成功の糧を探す。人間万事塞翁が馬
  • 学習と進歩の過程; 先生曰く『学部のレベルだと頭も働かず手も動かない。修士のレベルだと手は動くけれど頭は動かない。博士のレベルで頭と手がどちらも動き始める。中堅教授レベルになると頭は動けど、手が動かなくなる。そしてそれ以上だと手も頭も動かず、しかし口は動く。』自分がどの段階にいるのかを認識し、部下や組織を育てて行く時にもいまどこのフェイズなのか意識することはとても役に立とう。


などなど。この後退官記念パーティで先輩・同期・後輩と再会を楽しみ、先生とも少し話ができた。
さらにその後上野で学部時代の同期の面々と深夜まで飲む。10年という時間は人をどんどん成長させつつも、みんな変わらないところは変わらない。相変わらずエネルギッシュで頑張っていることがうれしい。
自分が研究の道を選ばなかったことに全く後悔がなかったかと言えばそうでもない時期だってあったのだけれども、いまはあの時の意思決定は間違っていなかったし*1、3年間の研究室生活も自分の糧になっていると言える。そしてまた今自分ができることを精一杯頑張っているし、その仕事を楽しんでいるとも言える。自分が働き始めて10年というよい区切りの年に、なにか自分の中で整理された気がする。中国に帰ってさらに精進しよう。

*1:今日のシンポジウムで科学ってなんて面白いんだろうとは思ったけれど