柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

ダイキン・リコール

中国に来ることが二年前に決まった時に、唯一最大の心配だったのが空気。そこでせめて家の中だけでも高性能の空気清浄機をまわし続けようと、真っ先に買ったのがダイキンの大型空気清浄機クリアフォース。確か7-8万円とけっこう高額だったけど、思いきって買って中国に持って来たのだ。空気清浄だけでなく除湿・加湿もついているので、季節によってとんでもなく湿気っぽくなったり、逆に喉が痛くなるほど乾燥したりする広州にもピッタリ。二年間ずっと愛用して来た。
そのクリアフォースにリコールのニュースが出たのが数ヶ月前。過去に販売した特定機種17万台を無償交換するのだという。妻の実家に届いたリコールのお知らせを転送してもらってそのことに気付いたのだけれど、かなり大きな機械を日本の営業所に送り返さなければいけないという文面だったのでほとんど諦めていた。国外で使用している場合にリコール対象になるのかどうかもわからないしね。
ところがである。しばらく放置しておいたところ、妻の実家にダイキンから連絡があったのだ。そこでこちらの状況を伝えてもらったところ、ダイキンの上海オフィスの方が対応してくれているとのこと。先日うちにダイキン上海オフィスから連絡があり、さらに今日広州のオフィスから人が出向いて来て新品に交換と相成った。なんという対応。わざわざ1ユーザーを遠く海外まで追跡し、対応するというのは大変な話で頭が下がる*1
もちろん顧客対応だけがコストというわけでなく、交換しなければならない機械そのもののコストが馬鹿にならない。小売価格が消費税込み7万円弱の機種で、トレードマージンが13%だと仮定する*2とダイキンの一台あたり売上高は6万円弱。ダイキンのアニュアルレポートを見てみたところ、連結ベースでの粗利は約31%。製品ごとの粗利率はわからないのでざっくり全社ベースの粗利で見積もると製造原価が約4万円。17万台回収・無償交換すれば新しい機械の製造原価だけで70億円近い金額だ。

今回のリコール、これまで販売して来た17万台のうち2台で発火事故が起きたのだという。販売台数に対して事故を起こしたものはわずか0.001%。それでも全品回収、新品と交換というからものすごい話だ。
じつはぼくはダイキンの株を少しだけ持っている。一株主の視点から言うとそこまで手間とコストがかかるリコールを起こすなんてというのが正直な気持ちだ。もちろんそれ以上にダイキンの社員や経営陣だって頭が痛かろう。でも、こういう0.001%の問題にきっちりと対応してくれるというのはとても真摯な話だと思う。フィリピン・中国と海外生活が長くなって来て、日本では考えられないいい加減さにすっかり慣れて来た身には正直やり過ぎなのではないかという感もなくはないのだけれども、こういう会社が信頼を勝ち得て世界でもっと飛躍して行ってくれれば良いなとも思う。がんばれ、ダイキン。

*1:まさか日本から持って来たのではあるまいなと思ったけれど、そもそもこの製品はMade in Chinaなので物流コストはそこまででもないだろう。

*2:家電流通チャネルのトレードマージンについては『日系メーカーへのヒアリングによれば、量販店の基本マージンは11%~14%だが、場所代、ヘルパー派遣代、展示商品、販促費などを含めると10~15%となり、トータルのマージン率は25~30%となり、日本国内と大きくは異ならない』 引用元: 中国の市場構造の動向と日本企業の戦略 (株)価値総合研究所より。