産業再生機構を引っ張ってきた冨山和彦さんの本、『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』を読了。PHP文庫の本には何かしらの偏見があったのだけれども、以前読んだ『会社は頭から腐る』がとても面白かったので買ってみた。期待にたがわずとても面白い本だった。
ビジネス・ファイナンスの仕事をしてきて10年経つけれど、恥ずかしながら規模の経済ということばを厳密に定義せずに使ったことに気づかされた。例えば航空業界の例。航空業界といえば、重い固定負担のため規模が効くんだなんて単純に考えていたけれど、それではLLCなどの規模の比較的小さいキャリアが高収益をあげられる理由の説明がつかない。実のところ大切なのは飛行機一台とばすにあたってどれだけ稼働率をあげられるかであり、飛ばす本数の問題ではない*1。
稼働率(狭義での規模の経済)の話をしているのか、それとも広義での規模が本当に効くビジネスなのか。ついつい無批判に規模の経済を信じて拡大路線を突っ走り、その結果として固定費が膨らんで結果的に規模がなければ運営できないなんていうフィードバックがかかっちゃうなんてことは良くありそうである。
その他のアナリシスの話も面白い。ファイナンシャルアナリシスというのは加減乗除のレベルでほとんどできてしまうくらいでテクニカルに難しいことなんてさほどない*2。結局のところ、現実をいかに深く理解して、数字の背後にある現象に切り込めるのかが鍵なのだよね。
IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (PHPビジネス新書)
- 作者: 冨山和彦,経営共創基盤
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 新書
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