柿の種中毒治療日記

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ゲド戦記 さいはての島へ

ゲド戦記第3巻の『さいはての島へ』を読了。前巻で青年だったゲドは、この巻では冒頭すでにロークの大賢人である。世界の均衡が崩れ始めている原因を探りに旅に出るその連れは17歳の若者アレン。この話は17歳の青年の成長物語。

若きアレンは大賢人と二人で旅をする中、その気持ちが揺れ動く。最初は単なる憧れ。そして憧れの相手を助けようという気負い。それがいつしか大賢人への疑念へと変わる。ロールプレイングゲームの世界と全く違って、この大賢人はとにかく派手な魔法を全く使わないし、どこへいくのか、なにか解決策を考えてるのかといったことを断言するわけでもないから無理もない。しかし一緒に旅をしていく中で、アレンは少しずつゲドを理解していく。最後に大きなことを成し遂げて、全ての魔法を失ったゲドを背負ってこの世界に戻ってくるのは他ならぬアレン。アレンはその後アースシーの偉大な王になるのだけれども、ゲドは何か明示的に教えたりしない。それはすべてアレン自身の気づきに委ねられている。

ひとは成長するけれども、それと同時に老いていくしいつしか死ぬ。この話は成長と同時に、死と死への恐れ、死を超越しようとする力と退廃を描いているのかな。 不死のものを目指すクモに立ち向かい、それを抑えたゲドは全ての力を失って故郷ゴントへとひっそり帰っていく。自分自身の全ての力を失ってまで。ゲド自身大賢人とまでよばれる魔法使いなのだから、ゲドがクモのように永遠の命を欲することだってできなかったわけではないだろう。世界を次の世代に託していく大賢人の謙虚さは彼自身が真に偉大であることの証であるような気がします。

蛇足ながらこの本を読み終わって、あれ?アレンの父親殺しのエピソードはどこへいった?と思ったのだけれどそれは宮崎吾朗監督のアニメ映画の方だったのだね。アレンの成長と偉大な王への道のりを語るのに、彼が王殺しである必要あったんだろうか。。

 

ゲド戦記 3 さいはての島へ (ソフトカバー版)

ゲド戦記 3 さいはての島へ (ソフトカバー版)