柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

クララとお日さま

カズオ・イシグロの「クララとお日さま」を聴き終わった。AIロボットのArtificial Friends = 人工親友クララと、人間の女の子ジョジーをめぐる物語。終始AIロボットであるクララの目線で物語は進み、クララが見たもの、クララが思ったこと、クララが抱いた感情をクララ自身が語っていく。人間を人間たらしめるものはなんなのだろう、ということを考えざるを得ない話。

たとえばAIが『観察し、学習することができる』能力を得て、それを活用することで、人格のコピーを作れるのか?それによって異なる個体が連続する『思考』を受け継ぎ、死から逃れることなど可能なのか?

また、AIはその判断基準や論理回路がわからないから怖いという話がある。この物語の中でも、「常に合理的」だと僕たちが思いがちなAIロボットであるクララが、因果と相関を間違えた誤学習によって太陽に対して信仰に似た思いを持ち、それに突き動かされて行動していくところなどとても面白い。なぜここまで『お日さまの特別な力』を信じているんだろうという違和感と不気味さもあるけれど、それはロボットに合理性を期待しているからこその気持ち悪さなのだろう。そういう不合理さこそが実は人間らしさ、なのかな。

そしてエンディング。AIBOに対して愛着を感じ、いつまでも修理をしてパートナーとして暮らす人もたくさんいるだろうし、逆にひと時楽しんだらあとは箱に入れてしまったり捨ててしまう人もいるだろう。AIロボットが人間のような外見で人間の『親友』として振る舞えるほどになった時、どうするんだろう?

聴き終わった後で少し書評を見てみた。Vogue Book Clubの書評がとても面白かった。物語の核心部分に触れる記述はたくさんあるけど、物語を読みながら感じたことを言語化してくれるし、自分では思い当たらなかった考察なども面白い。

www.vogue.co.jp

wired.jp