カナダ東部をめぐる旅、8日目。昨日の日帰りケベック旅行で思った以上に疲れていたみたいで、8時過ぎまで熟睡した。
朝食はインルームダイニングで、Renaissance PancakesとContinental Breakfastを頼んでみた。モントリオールは食べ物がとてもおいしい。それはホテルのインルームダイニングでも変わらず、大げさでなく、本当に最高においしいパンケーキだった。外側は少しカリッとしていて、中はふんわり。メープルシロップの甘みがよく合う。ベリーやフルーツもたっぷり添えられ、どれも甘くておいしい。

モン・ロワイヤル公園
11時ごろホテルを出て、Lyftでモン・ロワイヤル公園へ。
迎えに来たのは少し古い車。運転手はとてもフレンドリーで、いろいろな話をしながら、一昨日美術館へ行くときに歩いたSherbrooke通りを西へ進む。そこから右へ曲がり、坂をどんどん上がっていく。坂の中腹では大きな病院を正面に見ながら、道なりに左へ。
やっぱり坂のある街が好きだな。坂を上がっていく感じは、六甲道あたりから六甲山へ向かう感じと、なんとなく似ている。
神戸で暮らしたのはわずか3年だったけれど、古いゴルフワゴンやバイク、そしてロードバイクやマウンテンバイクで、本当にいろいろなところへ行った。坂を上がっていくのも好きだし、坂を下るのも好きだ。
古い車で、エアコンはほとんど効かない。それでも窓を開けて走ると、涼しい風が気持ちいい。草の匂いを楽しみながら、人家の少ないエリアへ入っていく。日差しは強いけれど、ランナーやサイクリストがちらほら。気持ちよさそう。


着いたのはメゾン・スミス。いまは工事中で利用できないけれど、外観はとても雰囲気のよい石造りの建物。普段は案内所やカフェなどとして使われている歴史ある建物らしい。
そこから砂利道を少し歩く。日差しは強いけれど緑が多く、木陰に入ると涼しくて気持ちがいい。



展望台の手前には、100年以上前に撮られた写真が並んでいた。ここからの眺めは、モントリオールの人々にとって昔から格別だったのだろう。


展望台からは、眼下にモントリオール市街を一望できる。手前にはMcGill大学や高級住宅街、ダウンタウンの高層ビル群。その向こうにはセントローレンス川と、さらにその対岸。香港のザ・ピークから見た眺めの記憶をくすぐる。
そのあと、シャレーの中のカフェで一休みして軽食。クロワッサン、ハムとチーズのバゲットサンド、ソフトクリーム。
「こういう場所でも」というのは少し失礼な言い方なのだけれど、どれもとてもおいしい。街のあちこちに、こういう味へのこだわりがあるところもいいな。



モン・ロワイヤルの大階段を下り、McGill大学の構内を通り抜けて、Sherbrooke通りまで戻ってきた。





Marché Atwater
今日は昨日のケベック訪問とは違い、モン・ロワイヤル以降の日程をまったく決めていなかったので、どこへ行こうかと思案。
水辺へ行きたい妻と、市場へ行きたいぼく。ChatGPT Proに相談すると、いくつかの候補の中から出てきたのが、Marché Atwaterとその周辺の運河散策だった。
さっそくLyftで移動。今度のドライバーはとても陽気なおじさんで、この運転手も道すがら、左右に見える名所を紹介しながら連れていってくれた。
Marché Atwaterに着いて、屋外に並ぶフルーツ、野菜、花の店先を冷やかしながら歩く。鮮やかなトマトがおいしそう。セロリの青い香りもとてもいい。たくさんのベリーが売られていて、ブルーベリーはキロ単位の大きなパックまである。
マルシェの端には、フードコートのような飲食エリア。ここでは足を止めず、市場の建物に入って引き返す。
建物の中には、メープル製品の店、肉屋、生パスタ屋、パン屋、チーズ屋、雑貨店などが並ぶ。ここは地元の人やレストラン関係者も買いに来る一方、観光客も訪れる、地域の市場と観光地が混ざった場所らしい。
マルシェに入って最初に息子へメロンの試食をくれたお店に戻り、数種類のベリーの詰め合わせを購入した。









ラシーヌ運河
市場を出ると、ほんの目と鼻の先に運河があった。運河の横には単線の線路が延び、少し先には、かつてここが工業地帯だった時代を思わせる煙突も見える。その向こうには、古い建物を改修したように見える集合住宅。
水上では足こぎボートやスワンボートに乗って遊んだり、SUPを楽しんだりする人々。水辺を風が吹き抜けて、とても気持ちがいい。運河沿いには自転車道があり、たくさんのサイクリストが走っている。息子から「日本に帰ったら、またサイクリングしようね」とのお誘い。少し涼しくなったら、ぜひそうしよう。
橋を渡ったところにあるマドレーヌ=パラン公園の木陰で、さっきのマルシェで買ったカナダ製のポテトチップスを食べながら休憩。この公園にはコンクリート製の卓球台があり、卓球を楽しむ人たちもいた。
このあと運河沿いをさらに歩き、セントローレンス川まで出ようかとも思ったけれど、さすがに子ども連れではかなりの距離なのでやめた。代わりに、マルシェの向かいにあるSuper Cというスーパーへ。Super Cは、ケベック州で展開するディスカウントスーパー。
価格を重視した日常のまとめ買いには、こちらの方が使いやすそうだ。少なくともぼくらが歩いた棚には、Lay’sやM&M’sなど北米の大手ブランドのお菓子が大袋でずらっと並んでいて、なかなか壮観だった。小さな店の並ぶMarché AtwaterとSuper Cが、道を挟んで共存しているというのも興味深い。




ラシーヌ運河一帯は、19世紀半ばから20世紀にかけてのモントリオールの工業化を象徴する場所らしい。運河の拡張後、工場が集まり、水運、水力、鉄道を組み合わせた工業地帯になっていった。1840年代の運河拡張によって水力利用が可能になり、1848年ごろから工業化が本格化した。
マドレーヌ=パラン公園も、もともとはろうそく工場があった場所で、工場の閉鎖と解体後にモントリオール市が公園として整備した。運河の南側に広がるポワント=サン=シャルルも、工場や鉄道で働く人々が暮らした、カナダでも古い労働者街の一つだったらしい。
たまたま来たマルシェと運河だったのだけれど、期せずして、旧市街ではフランス植民地時代の街の層を、Sherbrooke通りやMcGill大学の周辺では19世紀に英語系の商人や実業家が大きく形づくった街の層を、そしてラシーヌ運河では工業化とその後の再開発の層を見ることができた。
Super Cから再びLyftでホテルへ戻り、しばらく休憩。
Le Pois Penché
ホテルでシャワーを浴び、少し休憩。カナダ最後の夜の夕食をどうしようかと思案する。
数十年前、初めて海外旅行へ行ったときから、いつも海外旅行のお供は『地球の歩き方』だった。今回も持ってきているし、ざっと目は通した。ただ、今回の旅行中いちばんお世話になったのは、ChatGPT 5.6 Sol Proだった。歴史のこと、街のこと、美術品のこと、おすすめの移動ルート、レストランのメニュー翻訳まで、たくさんの場面で活躍した。
で、夕食。お腹は減っているけれど、そこまでペコペコというわけではない。昨日のケベックでのランチのような雰囲気がいい。フルコースではなく、もう少しカジュアル寄り。ただし旅行最後の夜にふさわしく、予算にはあまりこだわらない。そんな条件を挙げながらChatGPTとやり取りし、最終的に選んだのが、Sherbrooke通り沿いにあるLe Pois Penchéというブラッスリーだった。ChatGPTではOpenTableの空き状況まで表示され、何時なら予約できるのかも確認できる。とにかく便利。
ツアーを使った海外旅行は、新婚旅行でイタリアへ行ったときの一度だけ。時間もルートもレストランもほとんど決めてもらえて楽だったし、当時参加した阪急交通社のツアーは、ガイドの方の知識も段取り力も格別だった。それ以外の旅行では、いつもガイドブックを片手に歩いたり、インターネットで調べたり、ホテルのコンシェルジュに相談したりしてきた。それがいまや、自分専属のツアーガイドがいるようなもの。すごい時代になった。
また脱線してしまった。
Le Pois Penchéを6時に予約し、時間どおりにお店へ。
前菜はガスパチョとオニオンスープ。メインは4皿。息子はステーキ、娘はサーモン。ぼくと妻はブイヤベースとムール貝をシェアした。どれも本当においしく、サービスも最高。今日はさらに、モントリオールを拠点に活動するクルーナー、Matt Mardiniが登場。フランス語の曲やシナトラの名曲を、甘い声で歌ってくれた。歌も素晴らしかった。
モントリオールに来てから、どこで食べる料理も本当においしかった。そして最後の夜に、またひとつ良い思い出ができた。というか、この四半世紀、いろいろな国を旅してきたけれど、食事の満足度ではイタリア旅行と並ぶ、最高の経験だったかもしれないな。






ホテルに戻り、荷造りをあらかた終えてから、Super Cで買ってきたIPAをひとりで飲んだ。この旅の中で最初で最後のビール。おいしい。