柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

笑顔・笑顔・笑顔

ぼくたちはフィリピンでは一種のGated Townの中に住んでいる。ゲートの所には門番が立ち、この中にはジプニーが入ってくることもない。ゲート内のモールには高級ブランドの並び、その中を歩く人々も金持ちであることが分かる身なりだ。ふだんはこのゲートから出る時には基本的には車なのだけれども、今日はちょっとSIGMAの単焦点レンズをつけたカメラだけを持ってリュックを背負ってぶらりと歩いて来た。冬行く予定のカンボジアに備えて暑い中歩いとかないとね。
パワープラントモールの前を下ってPasig川沿いへ。日曜日だけれども車通りはけっこう多く、なかなか道を渡るタイミングがつかめないでいると、おなじく道ばたにいた女の子たちが声をかけて来た。
『ox%$%&'x21』
タガログ語は分からない。。。『英語しか分からないんだー』というと『Picture, Picture』だって。OKといってレンズを向けてパシャリ。シャッターが下りた途端に見せて見せてと走り寄って来る。

写真を見せてあげると『Maganda! Maganda!』と騒いでる。Magandaというのはきれい、とか美人とかいう意味だ。どうやら撮れ具合に満足したのかな。と思ったら
『じゃあもう一枚!』
では撮りましょう。道路に車が走ってるのに車道に出てポーズを決める子供たち。こちらが車が心配でたまらんわ。写真を撮るともちろんそれを見に走りよってくる。EOS KISS DNの液晶は小さいから、みんなで奪い合い。

ようやく車の流れが切れて2車線の道路の向こう側にわたれた。川を眺め、対岸の砂糖工場『ノアの方舟砂糖会社』の写真を撮ったりしていたら、さっきの女の子たちも道を渡って来た。『道路じゃなくってこっちも背景にしてここでももう一枚撮ってちょうだい』だって。それではもう一枚パシャリ。

『名前はなんて言うの』と聞かれて自分の名前を言う。『へー、いい名前ね』なんてすでにお世辞も使えるのである。君たちの名前は?ときくと『プリンセス、ジュディス、アレックス』だってさ。そりゃ素敵な名前だ。さて、先へ進むかと思ったら案の定。
『写真撮ったんだからお金ちょうだーい』
やっぱりこう来ると思ったんだよね。でもあいにく小銭の持ち合わせがない。リュックの奥深くに財布は隠してあるけど、そんなの出すのも面倒だ。ここはノマ洞カンボジア旅行を真似てこれで行くしかない。
『えー、そっちが撮ってくれっていったんだろう。撮ってあげたんだからいいじゃん。』『やだー、お金お金。お金ちょうだーい』『だけどほら、ポケットの中にもなんにもないよ。リュックのポケットはほら、水筒だけだし』
ブーイングは来ず。どうやら諦めたのかな。と思ったら逆に、
『オッケー、じゃあもっと撮って!』
さっきまで撮らせたんだからお金くれといっていたのにね。この一枚が彼女たちの手元に届くことなんてあるわけないのだけれども、どうしてそんなに写真に納まりたいのか不思議であり、でもなんだか分かる気もする。すぐ側のゲートの中の金持ちの子供たちはぼくのカメラになんて興味は向けないし、むしろぼくがカメラを向けたら怒られそうなものだけれどここではまったく逆だ。
グループで撮るのにも飽きたみたいで、『じゃあ今度は私一人で撮って』

モデルみたいなポージング。日本で言う小悪魔系とはまた違うたくましさのある小悪魔系である。

かっこ付けてるけどそのシャツよく見たら黒ヒゲ危機一髪じゃん!いったいどこで買ったのであろう。

その辺にいたお母さんを呼んで来て一緒に撮影。お母さんとお姉ちゃんが写真に入ろうとしてたら小さい子がフレームの中に飛び込んで来た。

いつまでたっても終わらない。『えー、じゃあ次は私が一人で』、『じゃあ私はその後』と賑やかなやり取りが続く。キリがないから『じゃあみんな一緒に』といったらぶーぶー言いながらレンズを向けるとしっかり笑顔。
『じゃあね』といって歩き出したら後ろの方でThank you!!!と大声で声をかけてくれた。あはは。壁を一枚隔てただけで、ずいぶん違う世界が広がっていた。川沿いを歩いて壁の外の街をぐるりと一周。僕たちが住む建物はすぐそこに見えるのに歩けども歩けども壁で遮られていてちっとも帰れやしない。そりゃまあだからGated Townなのだけどさ。ちょっとドキドキ。ちょっとしたアドベンチャー。