柿の種中毒治療日記

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いつの間にやら被選挙権もある年じゃないか

真保裕一『ダイスをころがせ!』を読む。この人の本は手に汗握るものが多くて好き。ディテールまで細かく書き込みながら、スピード感が全く失われていない小説が多いし。(映画は最悪だったけど)雪山を舞台に山男とテロリストの戦いを描いた『ホワイトアウト』や偽札作りに血道をあげる『奪取』など、エンターテイメントとしてとっても楽しめる。で、『ダイスをころがせ!』は選挙戦だ。地盤も看板も鞄もない元新聞記者とその友人で選挙参謀を勤める主人公のお話。正直スピード感とか、手に汗握る感に関しては他の作品と比べると薄いのだけど、それでも選挙戦という戦いを巡る軸、現在の政治と国のあり方に対する問題提起の軸、主人公の家庭にまつわる軸とうまく3つの軸が組み合わされていて一気に読めた。題材が選挙だし、相手はテロリストでも警察でもなく対立する相手or敵が明確に提示されている訳ではないので、そこらへんの単純なカタルシスはないけどね。まあ、何でもかんでも主人公vs敵っていう単純な対立構造にしてしまうのもどうかと思うのでこれはこれでありかと。
ところで、今までだったら最初の二つの軸に面白さを感じてたんだろうけど、自分の立場の変化からか3つ目の夫婦の関係にも色々考えるところがある自分を発見してびっくり。やはり自分自身の変化って大きいね。

ダイスをころがせ!〈上〉 (新潮文庫)

ダイスをころがせ!〈上〉 (新潮文庫)