葉真中顕さんの『ロスト・ケア』を読んだ。介護の世界を題材とした社会派ミステリー。
僕にはまだ介護の実体験がないけれど、父母は祖父母の介護をしていた/している。電話越しに少し話を聞いて、大変そうだなと思っていたけれど、まったくその大変さをイメージできていなかった。
この小説の中で描かれる介護のシーンを読んでいると、介護の負担が家族にとってどれほど重いのかをひしひしと感じる。認知症によって性格も変わり記憶もあやふやになり、暴力さえありうる。その相手が他人ならば逃げれば良いのかもしれないけれど、親であればそういうわけにもいかない。
お金があればまた別だけれども、そこで必要なお金を出せる人がどれくらいいるのだろうか。試しに横浜市の有料老人ホームで認知症でも入居できる老人ホームについて検索してみたら、月額プラン40ー80万円という目の玉が飛び出るような金額が並んでいた。
横浜市の認知症でも入居できるホーム一覧|ベネッセスタイルケア
相手の同意なしに勝手に判断し、そういった介護対象の老人を殺して回る「彼」は殺人者としか言いようがないけれど、じゃあ相手の同意があったらどうなのだろう?その同意が本当に自発的なものであるかどうかどう担保するのか?
社会派ミステリーなのでミステリー要素もあり、見事に作者のミスディレクションに引っ掛かったのだけど、ミステリー要素以上に登場してくる人々の言葉が重い小説だった。