柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

ロスト・ケア

葉真中顕さんの『ロスト・ケア』を読んだ。介護の世界を題材とした社会派ミステリー。

僕にはまだ介護の実体験がないけれど、父母は祖父母の介護をしていた/している。電話越しに少し話を聞いて、大変そうだなと思っていたけれど、まったくその大変さをイメージできていなかった。

この小説の中で描かれる介護のシーンを読んでいると、介護の負担が家族にとってどれほど重いのかをひしひしと感じる。認知症によって性格も変わり記憶もあやふやになり、暴力さえありうる。その相手が他人ならば逃げれば良いのかもしれないけれど、親であればそういうわけにもいかない。

お金があればまた別だけれども、そこで必要なお金を出せる人がどれくらいいるのだろうか。試しに横浜市の有料老人ホームで認知症でも入居できる老人ホームについて検索してみたら、月額プラン40ー80万円という目の玉が飛び出るような金額が並んでいた。

横浜市の認知症でも入居できるホーム一覧|ベネッセスタイルケア

相手の同意なしに勝手に判断し、そういった介護対象の老人を殺して回る「彼」は殺人者としか言いようがないけれど、じゃあ相手の同意があったらどうなのだろう?その同意が本当に自発的なものであるかどうかどう担保するのか?

社会派ミステリーなのでミステリー要素もあり、見事に作者のミスディレクションに引っ掛かったのだけど、ミステリー要素以上に登場してくる人々の言葉が重い小説だった。

ロスト・ケア (光文社文庫)

ロスト・ケア (光文社文庫)