柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

七帝柔道記

先日図書館でなにかタイトルに心惹かれるものあって借りた、七帝柔道記を読了。

半分ほど読んだところでふと気づいた。あれ?これ読んだことあるぞ?

こういう時に読んだ本の記録をとっていると助かる。この日記の検索をしてみたところ、今から6年半前の2014年に読んでいた。しかも2014年に買った400冊のKindle本の中で一番面白かった本にさえあげている。

記憶ってあてにならないものだね。でもそのおかげでまた新鮮な気持ちで一から楽しめた。苦しみぬいて身体的にも精神的にも強くなっていく姿が眩しい。

 

七帝柔道記 (角川文庫)

七帝柔道記 (角川文庫)

 

 

 

 

 

コクーン

葉真中顕さんの小説5冊目は『コクーン』。これまで読んだ5冊の中で、もっとも感慨深く余韻の残る小説だった。

物語は終戦間際の満州からはじまり、1960年代の熊本、1970年台の関東のどこか、1995年の東京と、2011年の東北、そして現代へ。

色々な時間を前後し、いろいろな場所で、さまざまな人々をつないでいく。一見全く関係なさそうな人々の人生は少しずつ絡み合い、影響しあっている。金色の蝶がそれを繋ぐ。目眩く。

話の大筋はオウム真理教を思わせる新興宗教シンラ。それに絡め取られ、巻き込まれ、あるものはそれを自ら選び、人生が変わっていく。最後の種明かしは圧巻だった。これはありえた未来の一つの形。この人物は現実の世界のあの男。人生何がきっかけとなってどうなっていくのかはわからない。

窓から外を見る。台風前の不思議な雲を眺めながら、20年以上前の学生だった時に歩いた駒込の安アパートから霜降り銀座へのくだり階段を思い出した。

あれからもう20年がたった。いろいろな出会いと別れ、さまざまな偶然、自分がたまたま選んだいろいろな出来事と多少の幸運が重なって今がある。

いまこの瞬間こうやってこの本を読み、子供たちと交わす何気ない会話も何かの未来に繋がっている。幸あれかし。

コクーン (光文社文庫)

コクーン (光文社文庫)

 

 

 

マイルストーン

先週は一週間仕事がかなり忙しく、ここ数ヶ月熱心に続けてきたFreeleticsもサボってしまった。

3週間ぶりにジムに行って筋トレ。新型コロナ前に数ヶ月72.5キロで足踏みしてたベンチプレスなのだけど、前回の77.5キロを超える80キロをあげられた。新型コロナウイルスが出回ってから自宅トレーニングがほとんどだったのだけど、伸びるものだ。

40過ぎてからの挑戦。筋トレを始めたのは一年半前なので、亀の歩みではあるけれど、地道に努力してそれが形になって現れるのは単純に楽しい。一つのマイルストーンをようやく突破できた喜び。さて、どこまでいけるかな?

 

MILESTONES

MILESTONES

  • アーティスト:DAVIS, MILES
  • 発売日: 2009/04/03
  • メディア: CD
 

 

 

 

 

凍てつく太陽

最近、続けて読んでいる葉真中顕さんの小説。今週末は『凍てつく太陽』を読了。終戦間際の北海道が舞台で、主人公は特高警察官。日本人、アイヌ朝鮮人徴用工など色々な人たちが絡み合う。そしてガダルカナル

スケールが大きな話で、話が二転三転。夢中になってあっという間に読みきった。陸軍がひた隠しにする「軍事機密」のオチには肩すかしを喰らった感はあるけれど、でもそれもまた日米の科学力の差を考えると妥当だったのだろうし、しっくりくるエンディング。

「案外、服みてえなもんかもしれねえよ、国だの民族だのってのは」という言葉が心に残った。

 

昭和二十年、終戦間際の北海道を監視する特高警察、通称「北の特高」――。
彼らの前に現れた連続毒殺犯「スルク」とは何者か。陸軍がひた隠しにする「軍事機密」とは。
そして、真の「国賊」は誰なのか? かつてない「特高」警察小説!

逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密「カンナカムイ」をめぐり、
軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は捜査に加わるが、「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影に濡れ衣を着せられ、網走刑務所に投獄されてしまう。八尋は特高刑事としての「己の使命」を全うするために、脱獄を決意するのだが――。民族とは何か、国家とは何か、人間とは何か。魂に突き刺さる、骨太のエンターテイメント!

 

凍てつく太陽 (幻冬舎文庫)

凍てつく太陽 (幻冬舎文庫)

 

 

 

ロスト・ケア

葉真中顕さんの『ロスト・ケア』を読んだ。介護の世界を題材とした社会派ミステリー。

僕にはまだ介護の実体験がないけれど、父母は祖父母の介護をしていた/している。電話越しに少し話を聞いて、大変そうだなと思っていたけれど、まったくその大変さをイメージできていなかった。

この小説の中で描かれる介護のシーンを読んでいると、介護の負担が家族にとってどれほど重いのかをひしひしと感じる。認知症によって性格も変わり記憶もあやふやになり、暴力さえありうる。その相手が他人ならば逃げれば良いのかもしれないけれど、親であればそういうわけにもいかない。

お金があればまた別だけれども、そこで必要なお金を出せる人がどれくらいいるのだろうか。試しに横浜市の有料老人ホームで認知症でも入居できる老人ホームについて検索してみたら、月額プラン40ー80万円という目の玉が飛び出るような金額が並んでいた。

横浜市の認知症でも入居できるホーム一覧|ベネッセスタイルケア

相手の同意なしに勝手に判断し、そういった介護対象の老人を殺して回る「彼」は殺人者としか言いようがないけれど、じゃあ相手の同意があったらどうなのだろう?その同意が本当に自発的なものであるかどうかどう担保するのか?

社会派ミステリーなのでミステリー要素もあり、見事に作者のミスディレクションに引っ掛かったのだけど、ミステリー要素以上に登場してくる人々の言葉が重い小説だった。

ロスト・ケア (光文社文庫)

ロスト・ケア (光文社文庫)

 

 

 

W県警の悲劇

先日読んだ『絶叫』が面白かったので、同じ葉真中顕さんの『W県警の悲劇』を読んだ。帯にある通り、警察小説xどんでん返しの組み合わせの短編集。洞の奥、交換日記、ガサ入れの朝、私の戦い、破戒、消えた少女の全六編で、全て女性警察官が主人公。

叙述トリックが面白い。一章読んで、あれっ?となって騙されていたことに気づき、そこに戻ってまた読み直す。『破戒』以外は全て一本取られた。最後はなんというか、良い意味で唖然。

どうやら昨年BSテレ東でドラマ化されていたよう。ドラマ化で多少それぞれの女性警察官の役割は変更されているみたいだけど、面白そう。NetflixAmazon primeでも流してくれないかな。

W県警の悲劇

W県警の悲劇

 

 

 

絶叫

あっという間に8月。今年は帰省もしないのだけど、家の外もとても暑くてなかなか外に出る気にもなかなかならない。クーラーの効いた部屋で読書。

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

 

 

葉真中顕「絶叫」を読んだ。昔はてなダイヤリー罪山罰太郎名義で書かれていたブログは読んでいたのだけど、小説家デビューされたことは知りつつこれまで手にする機会がなかった。

朝、娘の付き添いで病院に行った待ち時間に読み始め、その面白さに午後も家で夢中で読んで夕方には一気に読了。

Amazonの紹介曰く、

平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。
猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか?
社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!

時系列にズレがある異なる三者の視点で語られる話が紡がれて、しだいしだいに輪郭が見えてくる。その中で語られる主人公鈴木陽子の人生。母親から愛されず、父親は失踪し、本人は平凡。平凡にもかかわらず人生を平凡に恙無く過ごすことは叶わず、どんどんと物事が悪い方へと向かっていく。その中で実は。。最後の大どんでん返しは暗澹たる気持ちになる一方で、ある意味痛快でさえある。

いまこうして日々をクーラーの効いた快適な部屋で過ごしているのはたくさんの偶然と少しばかりの幸運のおかげなのだろう。でもそれはいつまでも続く保証があるようなものではない。自分たちに、子供たちに、そして周りの人たちにも幸多からんことを。