柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul

Mt. Pinatubo Adventure-灰色の荒野をこえてエメラルドの湖へ

フィリピン有数の火山、ピナツボ火山へと日帰りで行ってきた。世界の終わりを思わせる火山灰に覆われた不毛の大地を四駆でかけること一時間。そのあと山道を歩いてのぼると、エメラルドグリーンに輝く巨大なカルデラ湖が待っている。


ピナツボ

ピナツボ火山はマニラから北へ車で3時間程度、フィリピンはルソン島北部にある火山だ。ぼくの記憶にもかすかにあるのだけれども、1991年に20世紀最大の大噴火を引き起こした。噴火以前に1,745mだった標高が噴火後に1,486mまでさがってしまうほどの大爆発で、大量の土砂をまき散らした。周辺では火砕流と火山灰に加え、火山堆積物に雨水がしみこんで流動化する火山泥流が発生して、数千戸の家屋が倒壊した。噴火の影響はフィリピン国内に留まらず、大量のエアロゾルが成層圏に放出されたことによって地球の気温が約0.5℃下がり、オゾン層の破壊も著しく進んだともいう。火山灰は高度34,000mまで噴き上げられたというから相当なものだ。
このピナツボが今では観光地となっている。雨季には大量の雨のため、鉄砲水や火山泥流を引き起こすという場所だけれども、乾季の間ならその灰色の大地と、失われた山頂部に残る差し渡し2.5kmのカルデラ湖を見に行くことが出来る。

出発

朝の4時半に家を出て、徒歩で待ち合わせ場所まで向かった。朝5時に近いというのに歓楽街ブルゴスは人で一杯。怪しい人に声をかけられながらも無視して先を急ぐ。5時過ぎにハイ・エースに乗って7人で出発。一路北へ、ピナツボを目指す。車の中ではKさんが握ってくれたアサリおにぎりを頬張り、準備万端。そのまま再び眠りについた。目が覚めてみるとそこはスービック。どうやら運転手さんは場所を知らなかったらしい。イライラしてもしょうがないと割り切るつもりも、度重なる停車とそこらへんの道を知らなさそうな人々に立て続けに声をかける運転手になんとも。結局車に乗ること6時間。予定を3時間程度オーバーしてようやくピナツボ火山の麓に到着した。ここから四輪駆動に乗り換えて、ピナツボ山を目指すのだ。まずは手続きを済ませ、1500ペソ支払って昼食。本来はトレッキング後に昼食の予定だったのだけれども、腹が減っては戦にならぬ。そのあとにはこの朝のハプニングを忘れさせる、素晴らしい光景が先に待っていた。

火山灰の大地

四輪駆動の車というのは本格的なピックアップとジープ。それもそのはずだ。むかった先のピナツボ山の裾野は、灰色の火山灰に覆われている。山頂から流れ出す水が川となり、火山灰を削り、段差を作り上げている。そこを越えていく。雨季になるとこの火山灰が泥流となるのだという。進むにつれてどこが道なのかもわからなくなってくる。


車に揺られること一時間ばかりで行く手をふさぐ水牛の群れ。立派な角の水牛たちが水浴びをしていた。一体こいつら、この灰だらけの土地で何を食べているんだろう。

壊れ、放置された自動車。廃墟好きの心くすぐる情景。その側を四駆が走る。

火山灰の平原を超えて山の中へ入っていく。両側には崩れそうな火山灰質の壁が迫る。一体どのくらいの厚さの火山灰が降り積もったらこのような光景になるのだろう。ぼくたちが乗ったピックアップはドアがしっかりとついていたから揺れる中も安心して乗っていられたけれど、前を行くジープに乗っていた面々は振り落とされまいと必死。

すぐ側にせまる火山灰の壁。そこかしこで崩れた灰が流れ出し、新たにいつ崩れてくるか分からない雰囲気が漂っている。

火山湖へ

四駆を降り、ここから火山湖へは徒歩での道のりとなる。ジープを降り、バッグを背負っていざ出発。今回は一番奥に入れるところまでジープできたのでここからはわずか20分ほどの道のりだ。山頂から流れてくる沢沿いに上がっていく。今までの灰だらけの土地と違って、意外に緑にあふれている。蝶も待っているし、虫の音も聞こえる。とはいえ100%安全というわけではない。昨年の台風の際に鉄砲水が起きて5人が亡くなる事故がおきたそうだ。今は乾季だけれども、今日の空は少し曇りがち。雨が降らないことを祈ろう。


火山湖

20分と少しで火山湖に到着。目の前にはエメラルドグリーンに輝く火山湖が広がっていた。思わず声が出る。ここは噴火後に雨が溜まってできた湖だ。噴火直後にはpH2という強い酸性、かつ40℃を超える水温だったと言う火山湖も今ではだいぶ中性へと近づいているそうだ。とはいえこのグリーンの強さは美しいと同時になにかまがまがしさもあるなあ。阿蘇山や草津にもにも同じくグリーンの火山湖がある。そういったところは強酸性で、二価の鉄イオンがとけこんでこういう色になっているそうだ。大学の無機化学の授業をちょっぴり思い出す。なにはともあれ、ぼくはこんなところで泳ぐ気にはさらさらならないけれど、フィリピン人や欧米人観光客たちはおもむろに水着に着替え、水泳を楽しんでいた。体に悪そう。

泳ぐ代わりにぼくたち一行はボートを借りて湖の中を一周した。差し渡し2kmを越すだけあって、巨大だ。対岸にわたるとカルデラの外壁がそびえたつ迫力満点の光景が待っていた。さらにこの場所は妙に暖かい。地下から温かいお湯がわき出していて、地面を暖めているのだ。冷たい湖の水と暖かい温泉が混じりあい、湯気が上がる。砂地の中に手を突っ込むととても熱かった。この火山が生きていることをまざまざと感じる。

帰途へ

火山湖をあとに下山。来た道をふたたび延々と引き返す。途中の村に住む人をピックアップの荷台に載せ、荒れた大地を走る。夕暮れが迫り、灰色の大地はさらに色を濃くしていく。美しい湖にもきっと魚はいないだろう。そこから流れる水が火山灰を押し流すまで、これから長い年月がかかるだろう。それまでずっとここは不毛の大地だ。


火山灰を浴びたからか、髪はごわごわ。カメラもホコリまみれになった。フィリピンの観光地としてピナツボが上がることはあまりない。雨季にくることは難しいし、危険がゼロとは行かないからだろう。だからこそ自分の中の冒険心を満たしてくれる、ゾクゾクとする場所だ。大満足の一日。