柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

ポンペイ展

上野の国立博物館で行われていたポンペイ展を見に行きました。

西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火で火砕流に飲み込まれて消え、その後18世紀に発掘されるまで地中で眠っていた街。その街から発掘された文物は2000年近く前のものとは思えない、とても色鮮やかで洗練されたものばかり。

絵画や芸術作品だけでなく、当時の鉄器もすごかった。外科用具や大工道具、鍋などの調理用器具などなど。個人的に一番驚いたのは金属製の水道管。これだけ発展した文明が2000年前にすでに存在したことがまずは驚き。

ポンペイの絵画は中世ヨーロッパのノッペリして暗い人物描写とは全く異なる、色鮮やかで活気にあふれる壁画に溢れている。ルネサンスというのは確かにギリシャやローマの古典古代の文明を「復興」させようという運動だったのだね。文明や人類の進歩というのは決して一直線ではなく、繁栄したローマ文明が消え、中世ヨーロッパに向けて文明が退行していったような気がするのだけれども実際のところどうだったのだろう。

ポンペイの発掘はまだまだ続いているみたい。ポンペイに行ったのはもう17年も前のこと。いつかまた、今度は子供たちを連れてポンペイに行ってみたい。

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宝石展

家から高速で一走りして上野へプチ旅行。上野公園は首都高を降りてすぐだから、驚くほどアクセスが良い。今日の目的は国立科学博物館の宝石展。かなり混み合っていてゆっくりは見れなかったけれど、色とりどりの宝石で目の保養になりました。

子供たちはお土産のガチャガチャで綺麗なアメジストと青瑪瑙が出てきて大喜び。子供の時のこういう「宝石」って何より特別だよね。

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アメジスト
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アメンタネックレス ヴァン・クリーフ・アーペル

カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』

前回の日記からまた3ヶ月近く空いてしまった。スキーをしに磐梯山や長野に行ったり、子供の誕生日を祝ったり。仕事はとにかく忙しくて残業続きではあるけれど充実。健康状態も万全。磐梯山の後で二日間寝込んだけれど。

そういえば最近子供たちがポケモンGOにはまったので、一緒にはまっている。でもそれは子供達と一緒だから、自分だけの時間というわけにいかないし、冬になって寒いから毎晩の一人散歩も止めてしまい、オーディオ・ブックもなかなか進まない。少しずつ少しずつ聞いて、先日聴き終えたのはカズオ・イシグロの『忘れられた巨人』。

何か大事なことが過去に起きたはずなのに、記憶にもやがかかっているようで思い出せない。そのもやの向こうにある「記憶」を探して老夫婦は旅に出る。旅するなかで夫婦が出会うのは、山の上に住むというドラゴンの秘密だった。その秘密の向こうに見え隠れする、無残な出来事の記憶。果たして、その記憶を取り戻すことは幸せを意味するのか? もしくは、それは新たな悲劇を意味するのか? 「忘れられた巨人」とはいったい何なのか? 当代きってストーリーテラーカズオ・イシグロが、アーサー王伝説を下敷きにしながら贈る、異色のファンタジー・ノヴェル。
wired.jp

ナレーションがとにかく素晴らしい。老夫婦が主人公なこともあって『血湧き肉躍るファンタジー』という感じではないし、どちらかというと老夫婦の足取りと同じようにストーリーもゆっくりと進んでいく。でも、そのスピード感が不思議な余韻を生んでまたそれがよい。『忘れられた巨人』というタイトルにもかかわらず、竜は出るけど巨人は出てこない。でもそのタイトルの持つ意味はずしっとくる。とても素晴らしい物語だった。また聴きたいな。

日曜日。息子の水泳教室を待つ間、Audibleで吉田修一さんの『路』を聴き終わった。

1999年に台湾新幹線の着工が決まり、そこから2007年開業までの物語。台湾で働く日本人商社員多田春香。日本に留学し、日本で働く台湾人男性劉人豪。台湾生まれで終戦とともに日本に「戻って」来た葉山勝一郎。戦前の国籍は日本だったけれども、終戦とともに『台湾人』に戻った中野赳夫こと呂燿宗。台湾で生まれ、台湾で生きる人々。色々なバックグラウンドを持った人たちの織りなす物語がとても面白い。

そういえば台湾を最後に訪れたのは2012年のことだった。2012年の1週間の台湾旅行の日記を見つけて、その7日間に行った場所や食べたものを思い出しながら読んだ。バイクが駆け回る台湾の街の雑踏、夜市の賑わい、故宮博物館の文物、宜蘭の空気の匂い、食べ歩いた色々なお店の小籠包。もうあれから9年も経つのかと思うとなんだか少し感慨深い。写真に映る娘の後ろ姿はまだとても小さくて、9年も経てば娘もそりゃあ大きくなるわけだと思う。そういう台湾の匂いや熱気を感じる楽しい物語だった。

いつかまた家族で台湾に行きたいな。その時には前回は乗らなかった台湾新幹線に乗って、高雄にも足を運んでみたい。

kakinotane177.hatenablog.com

恋愛小説になるのかと思いきや、そうはならないところで少しやきもきしたりするけれど、実際のところ人生ってそういうものかもしれない。愛する街で住むことを選ぶっていいなと思う。

クララとお日さま

カズオ・イシグロの「クララとお日さま」を聴き終わった。AIロボットのArtificial Friends = 人工親友クララと、人間の女の子ジョジーをめぐる物語。終始AIロボットであるクララの目線で物語は進み、クララが見たもの、クララが思ったこと、クララが抱いた感情をクララ自身が語っていく。人間を人間たらしめるものはなんなのだろう、ということを考えざるを得ない話。

たとえばAIが『観察し、学習することができる』能力を得て、それを活用することで、人格のコピーを作れるのか?それによって異なる個体が連続する『思考』を受け継ぎ、死から逃れることなど可能なのか?

また、AIはその判断基準や論理回路がわからないから怖いという話がある。この物語の中でも、「常に合理的」だと僕たちが思いがちなAIロボットであるクララが、因果と相関を間違えた誤学習によって太陽に対して信仰に似た思いを持ち、それに突き動かされて行動していくところなどとても面白い。なぜここまで『お日さまの特別な力』を信じているんだろうという違和感と不気味さもあるけれど、それはロボットに合理性を期待しているからこその気持ち悪さなのだろう。そういう不合理さこそが実は人間らしさ、なのかな。

そしてエンディング。AIBOに対して愛着を感じ、いつまでも修理をしてパートナーとして暮らす人もたくさんいるだろうし、逆にひと時楽しんだらあとは箱に入れてしまったり捨ててしまう人もいるだろう。AIロボットが人間のような外見で人間の『親友』として振る舞えるほどになった時、どうするんだろう?

聴き終わった後で少し書評を見てみた。Vogue Book Clubの書評がとても面白かった。物語の核心部分に触れる記述はたくさんあるけど、物語を読みながら感じたことを言語化してくれるし、自分では思い当たらなかった考察なども面白い。

www.vogue.co.jp

wired.jp

1年ぶりの日記

気づいたら一年以上日記を更新していなかったけれど、生きています。

この一年本を読む量がめっきり減り、ブログも書かず・読まず。仕事・家族・筋トレ中心の毎日でした。家から出ることもあまりないし、書くこともないし。ただ、オーディオブックは山ほど聞きました。Apple AirPods Proを買って、暇さえあればオーディオブックを聞いていた気がします。どれもこれも素晴らしいけれど、なんといっても『三体』シリーズは最高でした。『国宝』・『熱源』もハマりました。

あ、そういえば今年3月に猫が我が家にきて、家族が増えたんだった。日記を書いてないと、いろいろなことが起こっても大事なことを忘れてしまうものですね。もう少し日記を書こうかと思います。

熱源

熱源

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平成猿蟹合戦図

月曜日。久しぶりの三連休で心も体ものんびり。娘の友人宅から一晩預かったトイプードルのベンジーと散歩をしたり、リビングでソファーに並んで座ってぼーっとしたり。

朝から読み始めた吉田修一さんの『平成猿蟹合戦図』。舞台は歌舞伎町。身代わり出頭、脅迫、ヤクザ、、、そことなく漂う暴力の香りにドキドキしながら読んだのだけれども、幸いなことにあれよあれよと物事は良い方へ、うまい方へと転がり始めてハッピーエンド。そうか、これは猿蟹合戦だもの。蟹の子たちはきっと幸せになったのだろう。

 

平成猿蟹合戦図 (朝日文庫)

平成猿蟹合戦図 (朝日文庫)

  • 作者:吉田修一
  • 発売日: 2014/03/07
  • メディア: 文庫