柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

街とその不確かな壁

なかなか読み進められなかった村上春樹さんの『街とその不確かな壁』をまとまった時間をとって一気に読了。

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』と似た世界から始まって、いろいろ既視感があったのだけど、第二部に移って全く違う物語として楽しめた。

読み終わったのが夜中だったので、なんとなく自分が失ってしまったものを思い出す寂寥感。でも反対に、そしてそれ以上に、主人公が再び現実に戻ってきて、失ったものへの執着に対してひとつの決着をつけ、過去ではなく今この瞬間瞬間に向き合っていく。ささやかだけど誠実な人生が始まるんだろうなという前向きでポジティブな予感もする。

これは一つの『行きて帰りし物語』なんだろうな。欲を言えば、帰ってきたら『その後』がどうなっていくのかも読みたかったけど、それは自分の中で膨らませていけということかな?心に染みる物語でした。