柿の種中毒治療日記

Kobe→Manila→Guangzhou & Hong Kong→Seoul→Yokohama

貧富

今日からようやく家探し。これが今回のメインの目的だったのだけど、エージェンシーとの都合がなかなかつかずに最後の二日に押し込みで。朝の9時半からスタートして、今日はロックウェルという場所にあるコンドミニアムを見てきた。
ここはほとんど六本木ヒルズかそれともミッドタウンかと見まがうばかりのエリア。一帯が塀で囲まれ、銃で武装した警備員が守る高級住宅地の中に、パワープラントというブランド品ばかりを扱う4階建ての巨大モールが併設されている。普通のフィリピンの人の給与ではとてもじゃないけど買えないようなものばかりということもあって、モール内はそんなに人でごった返すこともなくゆったり快適。コンドミニアムに地下通路を通じて直結されているから、夜中まで映画を見たりバーで飲んだりしても安心して出歩ける。フィリピンの中にありながら良くも悪くもまったくフィリピンっぽさを感じさせないのだ。
ただ、ここのコンドミニアムはどこも高層ビルなのだけれども、朝日を浴びて気持ちよく目覚められそうな東向きの部屋からの眺望は現実を思い知らされる。30Fをこえる高さから水平に目をやるとそこには新宿のビル群もかくやという超高層ビルが林立している。そこから視線を下のほうに向けていくと一面に広がる貧しい家並み。スラムというわけではないのだと思うけれど、高層ビル群との対比がなんともいえない。逆側に面している窓から見下ろすと、今度は一軒一軒が信じられないほど大きな屋根と庭を持つ豪邸が並んでいる。
この国の貧富の差は本当に信じられないくらいだ。どこまで本当かちょっと資料をあたってみないと分からないけれど、マニラ日本人会の人によれば三食満足に食べれない人も多いとのこと。たとえばドライバーの仕事の場合年収10-20万ペソというから日本円に換算して25-50万円だ。そのぐらいの収入の人にとって一食1000ペソのディナーなんて目の玉の飛び出るような値段だろう。一方そんなの全く普通に払える層の人間もいて、そういう人たちはグリーンベルトやパワープラントみたいなところに集まってくる。
そして財閥の存在。これらの財閥はフィリピンがその昔スペインの植民地だったときから連綿と続くんだそうだ。日本で戦後財閥解体が行われ、農地解放が行われたことは本当に今の日本にとってよいことだったのだなと思う富の集中っぷり。マニラのほとんどの一等地を持つといういくつかの財閥は、激安な労働力を使って豪華絢爛なショッピングモールやレジデンスを立て続けている。そこに大企業や外国人、フィリピンの中でも収入の比較的高い層が金を落とす。さらにそのお金がお金を生んで、新たな街の大開発が再び財閥主導で行われている。ちなみにこの土地は国からの払い下げ。どこまでいっても財閥が金を儲けられるようにできてるなあ。新聞をにぎわす汚職のニュースなんかを見ていると、この国の正義はどこにあるのか、この国は大多数の国民のためではなく、金持ちのための国なのだなと感じてしまう。
政治家も政治家。渋滞の中サイレンが鳴らされ道を明ける。すわ救急車か警察かと思いきや、なんと政治家の乗るクルマなのだ。政治家というのが建前もへったくれもなく完全に特権階級として君臨しているのではないかとこんな些細なことからも感じてしまう。
ぼくは日本では右でもなく左でもなくただのノンポリだけれども、この現実を目の前にするとすくんでしまう。なんといったらいいのだろう。でも義憤なんていうのはおこがましい。ぼくは結局のところ、フィリピンの安い労働力を求める企業の一社員で、外国人。結局のところ超大金持ちとも貧しい人たちとも相容れないお客様。ガラスの向こうからその光景を見てるしかないんだ。