柿の種中毒治療日記

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猫を棄てる 父親について語るとき

 

終戦記念日ですね。終戦から78年、ぼくの親は戦後生まれだし、もちろん自分が戦争を体験した世代ではない。でもこの日にはいつも何か感慨深いものがある。

Audibleで本当にたまたま目に止まった村上春樹さんの『猫を棄てる 父親について語るとき』を聞いたところ、この話は先の大戦とも関わるものだった。偶然。

最初父親と一緒に猫を夙川の海岸に捨てに行ったけど、家に帰ってみたらその猫がいたという不思議なくだりを聞いて、3年間を過ごした神戸の街や夙川あたりの光景を久しぶりに思い出して懐かしい気持ちになった。夙川や神戸にぼくが行ったことだって、言ってみれば偶然。

でもこの話は夙川での彼の話ではなく、亡くなられたお父さんの従軍の記録などをあたって父親の歴史と向き合っていく話。父親が従軍して向かった先は中国大陸。真珠湾攻撃の前に除隊となり、その後の招集もたまたま国内勤務だった。一方元々父親が属していた第16師団はその後フィリピンレイテ島で師団13000人がほぼ全滅する。

そういったいろいろな偶然が積み重なって、その結果村上春樹という人がこの世に生を受け、そしてさまざまな物語を語るようになったというのはなんだか感慨深い。このお父さんから聞いた話があって、ねじまき鳥クロニクルノモンハン事件の話に繋がっていったのだろうか?逆に言えばあの戦争で命を落とした無数の人たちが『もし』生きていたら有り得たかもしれないさまざまな人生やその子孫の物語はそこで途絶えてしまったという重さ。

ぼくの亡くなった祖父が徴兵されてトラック諸島にいたとか、祖母が産まれたのが今の北朝鮮の元山で、命からがら37度線を越えて逃げてきたとか、色々な話を子供時代に聞いたのでなんとなく自分の中の恐怖体験としてつながっていたのだけれど、ぼくもまたそういった偶然と幸運によって命を受け継いだんだな。

 

 

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